◆「欠けているほうがいい」と思うワケ

邪道:あります。一般販売された物については、かなり揃いました。でも、懸賞品とか、地域限定品とか、まだまだ持ってない物はあります。ただ、最近は「欠けているほうがいい」と思うようになりました。
――どうしてですか? コレクションとは相反する感情のようにも思いますが……。
邪道:フルコンプって、ゴールじゃないですか。ゴールすると、終わっちゃうんですよ。だから、少し欠けているぐらいがちょうどいいと言うか。あと、僕のなかでは、「当時頑張れば手に入った物」が重要なんです。お手伝いを頑張れば買えたとか、お小遣いを貯めれば届いたとか。そういう物は、子ども時代の延長線上にあります。でも、懸賞品って、運なんですよ。もちろんコレクション対象ではあるんですけど、“追い求めるもの”とはちょっと違います。機会があれば欲しい、くらいですね。
◆100万円のレア玩具より、“探している時間”の方が大事
――仮に今、目の前に超レアアイテムがあったら、どうしますか?邪道:「100万円です」って言われたら、たぶん買わないです。そこまでいくと、“投資”になっちゃう気がするんですよね。ポケモンカードのバブルもそうですけど、「いくらで買ったか」が価値の中心になると、ちょっと違うなと思ってしまうんです。もちろん、結果として自分の持っている物が高額になったことはあります。でも、それはたまたま持っていたらそうなった、というだけなんですよ。僕は100万円払って買ったわけじゃない。だから、価値が上がったこと自体にはそこまで執着がないんです。
――ほかにも、自分なりのルールみたいなものはありますか?
邪道:昔はありました。「興味のある物は全部買え」っていう時代が。多少壊れていてもあとで良品が手に入ったら交換すればいいし、余ったのは売ってもいい。とりあえず確保するぞっていう。でも今は、それもだいぶ薄まってきました。自分のなかで「これは5万円ぐらいの価値だな」と思っている物があるとするじゃないですか。世間の相場が10万円だとして、目の前に8万円で売られていても、自分の基準と違うから買うことはないでしょう。そこをズラし始めると、たぶん際限がなくなるので。だから今は、相場よりも、自分がどう思うかを大事にしています。
――邪道さんにとって、コレクションは“所有すること”や“物の価値”だけが目的じゃないんですね。
邪道:昔は単純に「欲しい」が先にありました。でも今は、“モノを探す過程”の価値も高くなっています。知らない店に行くとか、誰かと情報交換するとか、ジャンク品をサルベージして直してみるとか。誰かに譲ってもらったとか。そういう体験までを全部ひっくるめて、コレクションなんだと思っています。だから、「モノからコトへ」って言われる時代のなかで、コレクターって意外とその両方を同時にやっている人間なんじゃないかなって思うんです。

【石川裕二】
編集者・ライター。「Tokyo Reimei Note」というウェブメディアを運営するほか、雑誌『実話ナックルズ』で連載中。「エスクァイア日本版」でも執筆中。SDガンダムとヴィジュアル系は永遠の青春。X:@yunini1203

