上司と部下は、「上下関係」ではなくフラットな「協働関係」
では、なぜ相手が上司になると、話しづらくのなるのでしょうか。それは、日本の社会には、「上司と部下は文字通りの上下関係である」という感覚が根強く残っているからかもしれません(本記事も、その点で「上司・部下」という言葉を使うことが望ましいのかは検討しましたが、分かりやすさを優先して使っています)。
上位役職者のほうが情報や権限を持っているのはたしかですが、だからといって部下が上司と違う意見を述べてはいけないというルールはどこにもありません。しかし、“上下関係”という意識があると、どうしても意見を述べることに躊躇してしまいます。
その点、ボスマネジメントが先行している海外は、“上下の指揮命令関係”というより、“業務遂行に向けたフラットな役割関係”と捉えるのが一般的です。
ハーバード・ビジネススクール名誉教授のジョン・P・コッターは『リーダーシップ論』(ダイヤモンド社)の中で、「上司が仕事を成功させるために、どれくらい部下の助けや協力を必要としているか」「上司にはどのようなプレッシャーがあるのか」を理解する必要性を説いています。リーダーシップは、リーダー一人で発揮されるものではなく、メンバーのフォロワーシップが必要不可欠です。
上下関係ではなくフラットな役割関係だと認識できれば、お互いの立場やプレッシャーを尊重しながらも、より良い成果創出に向けて率直な意見を交わすことができるのです。
上司と部下が「フラットな関係」といえる根拠
組織図では、たしかに上司と部下は上と下に位置づけられますが、場所が異なるのは、役割が違うからにすぎません(最近では、組織図も顧客に近い現場を上にする、または横に表記する企業もあります)。
部下には、現場で業務を遂行するプレイヤーとしての役割、上司には、チームに所属する部下を束ねて成果を最大化するマネージャーとしての役割があります。単なる役割の違いなのですから、どちらが上で、どちらが下かを論じても、あまり意味はありません。
しかも、プレイヤーとマネージャーに求められる能力はそれぞれ異なります。現場に密着するプレイヤーとして能力を発揮する人もいれば、全体を俯瞰するマネージャーとして能力を発揮する人もいますし、どちらも必要不可欠です。
別の視点で言えば、「上司だからすべての能力が優秀で、部下より常に正しい判断ができる」なんてこともあり得ません。現場に接している部下の持っている情報や能力、提案がなければ、上司は適切な判断を下せません。
一方、部下側としても経営方針などの情報や、各部署からの支援がなければ現場で成果を発揮できません。両者はプロとして互いに協力すべき対等な関係です。対等だからこそ、お互いに思っていることや考えていることを伝え、お互いの話に耳を傾ける。そして、お互いの考えにギャップがあるなら、それを埋める方法を一緒に考える。ボスマネジメントとは、そうした当たり前のことを、意識的に実践していこうという考え方です。
もちろん、フラットな役割関係だからといって、上司と部下の立場が同じという意味ではありません。人としての上下はありませんが、上司のほうに各種権限があり、責任の範囲も大きくなります。そこをいかに活用するかがポイントになります。
難波 猛
マンパワーグループ株式会社 シニアコンサルタント
