次世代へ引き継がれる「負動産」
タツヤさんは頭を抱えてしまいました。今後もし父親が亡くなれば、この物件は相続人であるタツヤさんと兄が管理費用の支払いとともに引き継ぐことになるのです。
ただでさえ、築50年を超える築古リゾートマンションの買い手を探すのは至難の業です。そのうえ、今回のケースは「共有名義」という最悪の足かせがついています。
不動産の共有名義における注意点
共有物全体の売却や処分を行うには、名義人全員(またはその相続人全員)の合意が法律上必須となります。つまり、見ず知らずの亡くなった釣り仲間の相続人を一人ずつ探し出し、全員から実印をもらわなければ、売ることができないのです。
「とりあえず、まずは兄さんに相談しないと……」
地方で働くお兄さんの困惑する顔を思い浮かべながら、タツヤさんはスマホの画面をタップしました。その指先は、焦りと不安で心なしか震えていました。
問題先送りのツケを支払わされる次世代
タツヤさんのようなケースは、決して特異なケースではありません。バブル期に購入したリゾート会員権やマンション、使わなくなった別荘地、あるいは昔流行した「原野商法」で騙されて購入した山林など、負の遺産を抱え込んでいる親世代は非常に多いのです。筆者の親族や知人にも、「相続の手続きをして初めて発覚した」という頭の痛い話が一つや二つでは収まりません。
それが親だけの名義ならまだしも、今回のように親族でもない当時の仲間同士での共同所有となると、問題の難易度は跳ね上がります。
さらに現代においては、制度面の変化も無視できません。2024年4月から「相続登記」が義務化され、不動産の相続を知った日から3年以内に登記申請をしなければ、過料を科される可能性が出てきました。もはや「面倒だからとりあえず放置する」という逃げ道は塞がれているのです。
多くの現役世代は、自身の資産形成には熱心ですが、相続を想定した親の資産まではなかなか気が回らないものです。しかし、場合によってはタツヤさんのケースのように、知らない間に「終わらない出費が続く負の資産」のバトンが、自分たちの手元へ引き継がれようとしているかもしれないのです。きょうだいがいる家庭では、争いを生む火種にもなりかねません。
親も高齢になると、考えることが面倒になり、問題を漫然と先送りしがちになります。だからこそ、親が元気なうちに一緒に「出口戦略」を考えたいところです。
なお、こうした所有者の焦りに付け込み、「あなたのリゾート物件を高値で買い取ります」などと謳って、高額な手数料や別の土地を売りつける悪質な詐欺業者がいることにも注意しましょう。一刻も早く手放したいからと安易に飛びつき、二次被害に遭うことだけは絶対に避けてください。まずは慌てず、信頼できる専門家に相談しながら、慎重に一歩を踏み出すことをお勧めします。
