◆各場面で「時間稼ぎ」ができなくなった
今大会ではいくつかの新ルールが採用されることになっているが、アイスランド戦で影響を及ぼしたのは交代時の規定になる。第4審判員が交代のボードを掲げてから退く選手は10秒以内にピッチの外へと出なければならなくなった。違反した場合は代わって入る選手が60秒以上経過してアウトオブプレーになるまで入れなくなる。GKの交代や主審の事前承認があった場合は例外と認められており、今回の試合であったように吉田麻也の交代時がまさに事前承認による例外パターンだった。今回は日本に有利に働いたが、本大会では気をつけなければならない教訓として印象深いシーンとなった。
そもそも勝っているチームの時間稼ぎを防ぎ、実際にプレーしている時間(アクチュアル・プレーイング・タイム)を増やすことを目的として新設されたルールになる。その他にも、スローインやゴールキックを基本5秒以内に行わなければならず、行われなかった場合は相手ボールとなり、ゴールキックの場合は相手のコーナーキックになる。また、ゴールキーパーが手や腕で8秒以上ボールをコントロール下においた場合は、相手のコーナーキックになることになった。
これら時間制限のルールでは、いずれの場合も主審が秒数のカウントダウンを行っているので、ぜひ注目して見てほしい。
◆審判員によって差が生じる可能性が
近年、サッカーの競技規則を考え直す際にアクチュアル・プレーイング・タイムを増やしようという考えのもとで、新ルールがつくられている。2022年のカタール大会では交代やプレー再開時に浪費された時間を厳密にアディショナルタイムに加えていた。それによってアクチュアル・プレーイング・タイムはその前のロシア大会より5分弱ほど増えたのだが、実際の試合時間は平均で5分半ほど伸びたという結果になっていた。そこからさらなる改善を求めたのが、今回採用された前述のルールになる。アイスランド代表のグンラウグソン監督は試合後に「新しいルールは嫌い」とコメント。「どういう試合であっても観客は1人欠けた相手と戦っている試合は見たくないと思う」と、本質的に問いかけた。
そもそもアクチュアル・プレーイング・タイムを増やそうというのも手段のひとつであったはずなのだ。本質はアンフェアなプレーを減らして、競技自体を楽しんでもらおうというのが主目的であったはずだ。個人的にはプレー間の“間”もサッカーの一部であり、それも含めて楽しめればいいと考えているので、今回の改正には賛成しかねている。
しかも、「プレーを行うように合図し、その後目で見てわかるようにシグナルを送り開始する」と記載されていることからもわかるように、主審の主観による判定の余地が残されている。交代のルールも同様に曖昧さは残されていて、明文化されたように見せて、審判員によって差が生じる可能性がある状態となっている。
VAR導入時と同様に賛否両論さまざまな意見はあると思うが、採用されることは決定事項であるため、不利に働かないように十分な対策が必要である。実際に日本代表は事前に対策を講じており、アイスランド戦ではしっかりと実践できていた。それでも思わぬかたちで試合に影響を及ぼすことが発覚し、本大会でも注目すべきポイントとして露呈した。

