ふわっふわのハムに、たっぷりのバター。食べ始めると止まらない、パリのジャンボン・ブール。

ふわっふわのハムに、たっぷりのバター。食べ始めると止まらない、パリのジャンボン・ブール。

サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。No63となる今回は、本誌No150に登場した『ル・パリゾ』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。

毎回恒例、サンドイッチのスケッチは川村さん直筆。今回は、ハムとバターのシンプルなジャンボン・ブール! 

たしかに、ここまで潔いお店はなかったなぁ。

『ル・パリゾ』がメニューに掲げるのは、ジャンボン・ブール(=ハム+バター)のバゲットサンドのみ。ただ、そこからバリエーションが展開される。
まず、基本型をお伝えしよう。バゲット、ハム、有塩バター、それに胡椒。この4アイテムで作られる。店から1ブロック先のブーランジュリー『ル・プティ・ミトロン』から徒歩で配達されるバゲットに、ノルマンディー地方イズニー産のバターを惜しげもなく塗る。その上に、大きなミルから胡椒を挽く。ハムは11区にて昔ながらの製法を守る『ドゥンベア』の看板商品「プランス・ドゥ・パリ」を扱い、スライサーで薄く切るごとにふわっふわっとパンに乗せていく。

窓には「ジャンボン・ブール専門店」と書かれている。

注文ごとにサンドイッチを作る店は、最近珍しくないが、その都度ハムをスライスする店は少ない。それに、ハムは切り方によってだいぶ印象が変わるものだ。『ル・パリゾ』では極薄で軽やかなスライスをフワッと落とすようにパンに乗せる。室温に置かれていた、塗りたてのバターと、パンの上でクシュっと空気を含んで丸まったハムが、噛むときに初めてギュッと潰れて、すると途端に旨味が口の中に飛び出す。最もスタンダードで、ありふれているはずのジャンボン・ブールなのに、初めて食べる感触だった。胡椒の存在も大きい。

この基本型から、最初に変化を生むのはハムだ。

実はプレーンなハムの他に、スモークハムとハーブで風味づけられたハムも揃えている。これだけでも結構変わる。たとえるなら、シンプルな梅干しと、紫蘇も一緒につけた梅干し、鰹節を加えた梅干し、のような感じだろうか。
だから、ハム+バターのサンドイッチといえど、これですでに選択肢は3つ。そこに、オプションが2つ用意されていて、コニャック風味の粒マスタードと、小粒状に切られ、しっかり甘みの効いたピクルスという、どちらもちょっと変化球のアイテムが控えている。どちらか片方だけ加えても、両方加えてもそれは好み次第だけれど、店主は、「スモークハムに、甘みのあるピクルスは互いの良さをちょっと消してしまう」と言う。
とはいえ、可能性としては、この時点で12種類になる。ジャンボン・ブールといいつつ、もし全部試してみたいと思ったら、デフォルトの味を食べたあと、11回も味変バージョンが楽しめるなんてびっくりだ。

本誌で紹介した、スモークハムとマスタードの組み合わせ。マスタードが辛味の強い硬派な味で、コーヒーよりもビールが合いそうだった。
配信元: & Premium.jp

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