チーズもさらに1種類あって、これがまた季節によって変わる。
少し前までは行者ニンニクを混ぜ込んだトム(主にアルプスの山間で作られる小型のセミハードチーズ)だったのが、数週間前からカンタル(オーヴェルニュ地方カンタル県で作られるチーズ。チーズを加えた濃厚なマッシュポテトである郷土料理アリゴにも欠かせない)になった。うかうかしていたら、トム入りバージョンを食べそびれてしまったから、カンタルが登場してすぐに、その時点で、「店主が今いちばん気に入って食べている」組み合わせを試してみた。それは、ハーブ風味のハム+カンタル+ピクルス。

テイクアウトをして家まで持ち帰り、包みを開けると、子どもの頃にフライドチキンを買って帰って箱を開けたときの記憶が瞬時に蘇った。挟んであるのはハムで、揚げものでもないのに、挽きたての胡椒とハムに付いているハーブと相まって、フライドチキンほどの食欲をそそる香りを漂わせたのだ。匂いに誘われて、なんておいしそうなんだ!と写真を撮り続けた。サンドイッチで、それもグリルしたわけでもない冷たいサンドイッチで、匂いに誘われて写真を撮り続けるなんてあるだろうか。
食べてみると、最初の印象は一瞬フライドチキンなのだけど、ピクルスの甘みにハッとした。甘酸っぱいというよりも、甘くて、チャツネ(主に南、西アジアで使われているソース、ペースト状の調味料)みたい。それが塩気を引き立てるのだろう、食べ始めると止まらなかった。チーズが全体を繋ぎ合わせる役割を担うのか、チーズも一緒に食べると味がまろやかになる。
後日オプションはつけず、プレーンなハム+バター+チーズで食べてみることに。

これが、ぜんぜん飽きなかった。それどころか、ひとつひとつの素材の風味に、より意識が集中する感じだった。そう、引き込まれていくのだ。しっかりと味わいを持つ素材の力ってすごい。やっぱりチーズはまろやかで、ハムとバターのほうがパンチがある。この日は快晴でサンドイッチの売れ行きがよく、2回配達されたバゲットがすでになくなってしまい、私が着いたタイミングで、ちょうど3度目の配達が届いた。ランチタイムが落ち着いた時間帯だったのだけれど、パン屋さんが近所ってすばらしい。

店の前に立てかけられた看板には、ハム&バターのサンドイッチはいつ食べてもいい!と書かれている。朝は9時半から夕方6時まで、いつでもその場で作ってくれる。ただし、店主一人で運営する小さなお店ゆえ、昼は行列ができる。午後は3時以降であればそんなに待たずに買うことができるはず。サンドイッチはハーフサイズでも買えるので小腹の空いたおやつタイムにもいいかもしれない。

