
日本企業の人手不足が解消する兆しを見せない。景気動向だけでは説明できない採用難が続くなか、企業は「人が足りない」という課題だけでなく、「求める人材が確保できない」という問題にも直面している。背景にあるのは、人口減少による労働供給の縮小と、AI・DXの進展による人材需要の高度化だ。人手不足はもはや一時的な景気現象ではなく、日本経済の構造変化を映し出す指標となりつつある。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。
景気動向だけでは説明できない人手不足
かつて人手不足は景気拡大の象徴的な存在だったと言ってもいいだろう。企業業績が好調になれば採用が活発化し、人材獲得競争が激しくなる。一方で景気が悪化すれば採用需要は落ち込み、失業率が上昇する。これが一般的な経済の姿である。
しかし現在の日本では、この常識が当てはまりにくくなっている。
物価上昇や原材料価格の高騰、世界経済の先行き不透明感など、企業を取り巻く環境は決して楽観できる状況ではない。それにもかかわらず、多くの企業が人材確保に苦戦し続けている。
背景にあるのは景気要因だけではなく、人口減少による労働供給の縮小だ。
総務省によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年の約8,716万人をピークに減少を続け、2024年には約7,300万人まで縮小した。約30年間で1,400万人以上の働き手が減少した計算になる。
さらに今後10~15年で、1971~74年生まれの団塊ジュニア世代が退職期へ向かう。一方、その後を支える若年層は大幅に減少しており、1973年の出生数が約209万人だったのに対し、2024年の出生数は約68.6万人まで減少した。
企業が採用活動を強化しても、そもそも働き手そのものが減っている。日本経済は今、従来の需要不足だけでなく、供給制約にも直面する局面に入りつつあると見ていいのではないだろうか。
人手不足は「量」の問題から「質」の問題へ
こうした状況を裏付けるのが、帝国データバンクが実施した最新の人手不足調査だ。
2026年4月時点で、正社員が不足していると回答した企業は50.6%に達し、4月として4年連続で半数を超えた。人手不足は一部業界の問題ではなく、日本企業全体に広がる経営課題となっている。
今回の調査で特に注目されるのが、情報サービス業の人手不足率が66.7%と全業種で最も高かった点だ。
生成AIの急速な普及により、「AIがエンジニアの仕事を代替する」といった議論も広がっている。しかし実際には、IT業界の人材需要は高い水準が続いている。帝国データバンクも、AI関連やDX(デジタルトランスフォーメーション)案件の拡大が人材需要を押し上げていると分析している。
現在、企業が必要としているのは、
・AIを業務へ導入できる人材
・AIを活用したシステム設計ができる人材
・DXプロジェクトを推進できる人材
・データ分析を経営課題の解決につなげられる人材
であるとされる。
つまり不足しているのは「エンジニアの人数」だけではない。高度な専門知識や実務経験を持つ人材への需要が高まっているのだ。AIの進化によって人材需要が減少するどころか、企業間では高度IT人材の獲得競争が激化しているようだ。
今回の調査結果は、日本企業が従来のエンジニア不足に加え、「高度IT人材不足」という新たな課題に直面していることを示している。
