「なんかカラス多くない?」
転勤を機に都内の賃貸アパートへ引っ越した喜川和泉さん(仮名)の夫が、入居から数日でそう口にしたという。一戸建て住宅街にポツンと建つ、塀に囲まれた二階建てアパート。駅からの近さが決め手だったというこの物件で、夫婦はすぐに奇妙な状況に直面することになる……。
◆隣の人から「掃除をしてくれませんか?」

彼女は憤りを抑えきれない様子で「そのホウキを譲るので、アパートの敷地内に置かれるキャットフードの掃除をしてくれませんか?」とお願いしてきたという。
一体どういうことなのか……? 喜川さんはワケがわからず、詳しく事情を聞いてみると、
「このあたりにいる野良猫に、毎日キャットフードをアパートの敷地に置いていくお婆さんがいるんです。キャットフードをあげるだけで、残飯の掃除はしないからカラスがそれを食べに寄ってきて子どもが怖がるし本当に迷惑! 私たちもアパートの敷地に無断で入って掃除するわけにもいかなくて困ってて」
とのことだった。
カラスが集まる直接の原因は、近所に住んでいるらしいお婆さんの後始末のない野良猫への餌やり行為。
喜川さんの夫は在宅ワーカー。しかし、毎日キャットフードを掃除するなんて、いくらなんでも手間である。 ホウキを受け取ると、まずは「敷地内に猫の餌を置かないでください」と書いた貼り紙をアパートの塀に貼り付けることにした。
◆貼り紙も効果なし、エスカレートする問題
だが、その効果はなかった。それどころか、キャットフードは今度は貼り紙の上、つまり塀の上に置かれるようになった。「その塀も敷地内なんだよ!」と、日々の掃除を担っていた夫は激怒した。問題はさらに周囲へも波及していた。カラスの被害に我慢の限界を超えたアパートの隣に住む男性が、キャットフードが置かれる原因となっている猫に水をかけたり蹴飛ばしたりと、実力行使に出るようになったのだ。また、保健所への通報も行われた。
貼り紙という受動的な対応の限界を悟った喜川さん夫妻は、解決に向けて具体的な行動に乗り出した。
近所の交番に相談すると、警察官からは「本人を連れてきたら注意します」とのことだった。だが、それは現実には難しいだろう。
常連として利用していた保護猫カフェから猫用の罠を借りて、アパートの敷地に設置することにした。近隣の一戸建ての住民にも許可を得て、庭にも罠を置かせてもらった。
「夫は『猫に罪はない』という考えのもと、懸命に保護を試みました」

