◆AIへの過信が生んだ「思考停止」
当初は翻訳の補助として利用していたが、次第に設問の回答そのものをAIに作らせるようになった。小河さんは「ChatGPTなら人間より正確だろうと本気で思っていました」と語る。自然な日本語で出力される回答を見て、自分で内容を確認する必要はないとさえ考えていた。
しかし、AIは作品特有の皮肉や登場人物の感情の機微を正確に捉えきれておらず、小河さんが提出した回答は、内容が微妙にズレたものになっていた。それでも彼は、そのズレに気づかなかった。「なぜか“AIが間違えるはずがない”という変な思い込みがあった気がします」と彼は言う。
◆教授からの厳しい指摘
後日、課題を採点した教授からは、次のように言われた。「これはご自身で考えたのでしょうか? きちんと教科書の問題を解いていれば、このような答えにはなりません。もっと教科書と向き合ってください」
この言葉に、小河さんは「あ、完全にバレたな」と強い焦りと恥ずかしさを感じた。だが、それ以上に……。
「私は会社では部下に仕事を教える立場でありながら、自身はAIに頼って、中身を理解しないまま課題を提出したんです。自分で考えることを放棄していた事実に、情けない気持ちになりました」
高いスクーリング費用と時間を費やしたにもかかわらず、結果的に単位を落としてしまった。
彼は利便性を優先するあまり、AIの回答を鵜呑みにし、自らで検証するプロセスを完全に省略してしまっていたのだ。この経験を経て、小河さんのAIに対する考え方は大きく変わった。現在も仕事や日常でAIを多用しているが、以前のように100%信用することはなくなった。
AIが生成したものを最終的な「答え」として扱うのではなく、あくまで「考えるための下書き」や「ゼロからイチを生み出すための補助」として位置づけるようになったという。
“AIを使うこと”と“AIに丸投げすること”では、ぜんぜん意味が違うのである。AIの登場によって、ぶっちゃけ、あらゆる場面で量と質、さらにはスピード感が求められるようになった側面は否めないが、あらためてAIの使い方には注意したいところだ(汗)。
<取材・文/日刊SPA!編集部、藤山ムツキ>
―[AIに相談して失敗した人たち]―
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

