[本セミナーはアーカイブ動画視聴も可能です。詳しくは下記をご参照ください。]
みなさん、こんにちは! FLNの関係人口創出事業(株式会社フューチャーリンクネットワーク)の室井です。 2026年5月27日、関係人口戦略セミナー#7「人口約4万人の農業のまち・茨城県鉾田市の先進事例から学ぶ、関係人口を創る『人×体験×拠点』の関わり方」を開催しました。

今回の事例地である茨城県鉾田市は、野菜の生産額で10年連続日本一を誇る農業のまち。圧倒的な人気を誇る「メロン」がありながらも、「商品は選ばれるが、地域は選ばれない」という課題を抱えていました。この課題にどう向き合ったのか。地域活性化起業人(地域コーディネーター)として2年間現地で活動した弊社・坂田が、観光動向分析(NPS調査)から農業体験プログラムによる関係人口創出までの取り組みを語りました。
本記事では、当日語られた内容に加え、本イベントの企画設計に携わった私、室井の視点から、セミナーでは触れきれなかった「集客・プログラム設計の工夫」についてもあわせてご紹介します。 セミナー本編をじっくりご覧になりたい方は、アーカイブ動画を限定公開していますので、こちらからお申し込みください。
アーカイブ動画のお申し込みはこちらデータが示した課題:「点」は強いのに、「面」が弱い
実は今回のセミナー、申し込み時の事前アンケートで参加者の皆様から一番多く寄せられた課題感が、「特産品はあるが、地域のファン化に繋がっていない」というお声でした。次いで「事業者の受け入れ体制・持続可能な仕組みづくり」「体験プログラムの企画・設計」と続き、いずれも本セミナーの核心テーマと高い一致を示しています。
「商品(モノ)は売れるのに、地域全体への回遊やファン化に繋がらない」実際こういったお悩みは多いですよね。今回事例として取り上げる鉾田市も、まさに同じ課題に直面していました。鉾田市には、メロンをはじめとする農産物を求めて全国からお客様が訪れます。直売所には行列ができ、シーズンには大渋滞が起きるほど。「点」としての魅力は、間違いなく強い地域です。
しかし、坂田が2年間にわたり現地でアンケート調査を重ね、NPS(*)を分析した結果、意外な事実が見えてきました。 (*)NPS…NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは、顧客ロイヤルティを数値化する指標
個々の直売所や施設のおすすめ度はプラスなのに、「鉾田市全体をお出かけ先としておすすめしたいか」と聞くと、スコアはマイナスに振れていたのです。つまり、メロンを買いに行く場所としては選ばれているけれど、鉾田市というまちのファンは生まれていない。「点」の消費で終わっていて、「面」の魅力につながっていないというデータが突きつけた鉾田市の課題でした。 実際、セミナー参加者の事前アンケートでも「特産品はあるが、地域のファン化に繋がっていない」という声が多く、「事業者の受け入れ体制・持続可能な仕組みづくり」「体験プログラムの企画・設計」に課題を感じているとの回答もありました。こうした課題は、多くの地域が抱えていることを改めて感じます。鉾田では、「点」を消費しに来る人たちを、どうやって「面のファン」すなわち関係人口へと変えていくか。これが、農業体験プログラムの目的とターゲットの設定につながっていきます。
メロンに頼らず入り口は「人」
面のファンをどうつくるか。この問いに対し、多くの方は、「スター資源であるメロンを体験コンテンツの目玉にしよう!」と発想すると思います。しかし、メロンは収穫の難易度が非常に高く、初めて農業に触れる参加者が体験するには現実的ではありませんでした。 この制約を踏まえて、プログラムでは一つの仮説を立てました。それは「メロンでなくても、いちご、さつまいも、葉物野菜といった作物と、それをつくる農家さんのストーリーで人は惹きつけられるはず。」というものです。これらの作物を扱う農家さんにご協力いただき、作物のスペックではなく、つくり手の想いを体験の軸に据えました。
セミナーでは語られなかった、集客設計の工夫
仮説を立て、企画が決まり、いよいよ実施となったとき。 前提としてお伝えしたいのは、これらの工夫は最初から完成形があったわけではない、ということです。2025年度は計5回のプログラムを開催しましたが、毎回坂田を含むFLNのプロジェクトチームで会話を重ね、仮説を立てては検証する……その試行錯誤の中でブラッシュアップされていったものです。ここからは、セミナー本編では触れられなかった具体的な話、効果的な集客を目指すためのプログラム設計の工夫について少しだけご紹介します。
工夫①:募集記事は、「農家さんの紹介」から始める
参加者募集の記事では、体験内容や農作物の説明から入るのではなく、必ず受け入れ農家さんへのインタビューを行い、「その人の紹介」から知ってもらう構成にしました。「いちご狩りができます」ではなく、「こんな想いでいちごを育てている○○さんがいます」から始める。体験や農作物の”スペック”の差ではなく、人を入り口にする設計です。これは先述の仮説と地続きの考え方で、参加者が最初に出会うのがコンテンツではなく人であることが、その後の関係の深さを大きく左右するというものです。
工夫②:申込から当日まで、参加者の「熱量」を保ち続ける
少しシビアな話もします。 こうした体験プログラムでは、当日になって突然来ない、連絡が取れなくなる、急な体調不良……そんな申込者の突然の離脱は、残念ながら珍しくありません。だからこそ、申し込んだ人が必ず来てくれるだろう!とは考えずに実施日から逆算した集客スケジュールと申込者管理を緻密に設計したうえで、申込から実施当日まで、定期的なコミュニケーションを欠かさないことを徹底しました。
申し込んだ瞬間がいちばん熱量の高い瞬間。その熱を当日まで冷まさずに保ち続けられるかどうかが、地味ですが、プログラムの成否を分ける重要なポイントです。
工夫③:宿泊型をやめて、日帰り型にした
当初、このプログラムは宿泊を伴う設計でした。しかし運営を重ねる中で、ある出来事がありました。親子での参加申し込みが入ったものの、最終的な参加には至らなかったというものです。やり取りの中から宿泊を伴う日程がハードルになったのではないか、運営としてはそう感じた出来事でした。
「参加したい気持ちはあるのに、宿泊が壁になっているかもしれない」この1件が決定打となり、プログラムを途中から日帰り型へと切り替えました。鉾田市は首都圏から日帰りできる立地。その地の利を活かして参加のハードルを下げたことが、間口を広げることにつながりました。もちろん宿泊を伴う体験を通じて、よりディープにまちを知ってもらいたいという葛藤はあります。しかし、まずは1度来てもらうこと。そこでできた関係を土台に、次の来訪につなげていく、そうした段階的なアプローチも、関係人口づくりにおいては有効な選択肢です。

