
◆名門・鹿島で守護神として君臨
早川は神奈川県相模原市出身の27歳。小学生年代から横浜F・マリノスの育成組織でプレーし、桐蔭学園高校、明治大学を経て2021年に鹿島でプロキャリアをスタートした。2022年途中、23歳の若さで名門の正GKの座を掴むと、その後現在に至るまで不動の守護神として君臨。2025シーズンには鹿島の9年ぶり9度目のJ1制覇に貢献し、見事最優秀選手賞にも輝いた逸材だ。現在の日本代表では、セリエA・パルマでプレーする鈴木彩艶に次ぐ立ち位置だが、虎視眈々と出場の機会を伺っている。早川の最大の特徴は安定感抜群のシュートストップだ。対シュートの局面で必要なすべての技術を高水準で装備し、決定機阻止はもちろん、ムラのないプレーでチームに安定感をもたらす。そんな高水準のプレーを可能にさせているのが、「①的確な予測」とそれに伴う「②質の高い準備」だ。
◆cm単位の微調整が生むビッグセーブ
GKのプレーを評する際、「反応が早い」という表現が頻繁に使われる。確かに、鋭いシュートに対してコンマ1秒でも早く反応しボールにアプローチするのは重要な能力だ。だが、この「反応が早い」という言葉は、しばしば「反射神経が良い」ことと混同されがちだ。2つの言葉の意味は、似ているようで実は微妙に異なる。実際に、早川の反射神経は素晴らしい。しかし、相手のシュートに対して毎回打たれてから反応していたのでは、あれだけの反応速度と安定感は生まれない。そこで鍵となるのが、上記した「予測」と「準備」である。
失点を減らすために、GKが最初にすべきことは的確なコーチングだ。マイボール時からボールを奪われたシチュエーションを想定して味方のDFラインに声をかけ、バランスを整える。相手がボールを持って自陣に進行してきた際も、毎秒変わる状況に合わせて味方の位置を調整。DFの視野外の相手選手の動き等も把握しながら修正点を瞬時に伝え、まずは極力シュートを打たせないよう、そしてより早い段階でピンチの芽を摘めるよう働きかける。また、DFラインの裏に送り込んできたボールに対してはGK自らペナルティエリア外まで飛び出してクリアするなど、できる限りグローブを汚さずにプレーできればベストだ。
とは言え、90分間のうちに自陣ゴール前に進入され、シュートを打たれてしまう場面も当然何度かは生まれてくる。勝敗の分かれ目にもなり得るその瞬間こそが、早川の見せ場だ。
基本的にサッカーのGKは、ゴールの中心とボールを結んだ直線上にポジションを取る。真ん中に立つことで、左右どちらに飛んできたシュートにも均等にアプローチすることができるからだ。また、シュートの位置が中央からサイドに流れるにつれ、上記した直線上の真ん中よりややニア側に詰めて立つ。これは、ニアへのシュートの方がゴールラインに到達するまでの時間がより短いためだ。
また、相手シューターの体勢や味方DFの寄せ方、角度、利き脚か否か、ゴールまでの距離等によっても最適なポジションは微妙に変わる。刻一刻と変化するゴール前の状況を読み取り、最終的にシュートを打たれる場所とタイミングを予測し、頭の中でより解像度の高いイメージを作りながら、常にベストなポジションを取る。そして安定した構えから瞬間的にプレジャンプ(初動をより早くするための予備動作的小ジャンプ。テニスプレイヤーなども使用する)を入れ、打たれる瞬間、左右両足に均等に体重が乗るように着地。ほんの一瞬静止したところから、ボールの着弾地点へ最短でアプローチする。指先でギリギリ軌道を変えるようなビッグセーブも、ポジションがわずか数cmでもズレてしまっていては生まれない。この「予測」と「準備」の精度が抜群だからこそ、早川はJ1でも屈指のシュートストッパーとして君臨しているのだ。
上記の内容を踏まえて彼のセーブ集をご覧いただければ、その質の高さを改めて感じていただけるだろう。下記の動画の2:25から始まる川崎フロンターレ戦でのセーブなどは、まさしくcm単位の細かいポジション修正があったからこそ生まれたビッグプレーだった。

