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「もう一回ここから勝負する時なんじゃないの?」竹原ピストルが語る、50歳を目前にした現在地

「もう一回ここから勝負する時なんじゃないの?」竹原ピストルが語る、50歳を目前にした現在地

◆大先輩からの言葉「歌は50歳からだよ」

――今の時代、言葉をこんなに真正面から信じてる歌手って珍しい気がします。

竹原:言葉に真摯に向き合っているとすれば、それは書くのがめちゃくちゃ好きだからじゃないですかね。こっちのほうが美しいな、こうなったら楽しいなって楽しみながら書いている部分だけは自慢かもしれないです。(※4)野狐禅っていうユニットを組んでいた頃に顕著だった“僕がこう歌うからこそ僕なんだ”という自分らしさを勝手に決めつけていたものは年々薄まってきて、今は完全になくなったと言い切れます。お題をもらって言葉を考えることも好きですし、何も考えずに韻を踏み倒すような言葉遊びも好き。今回入っているちょっと政治的なワードも、変に取る人もいるだろうなと思いつつ、“しかし意味はない”みたいな。そういう自由度がすごく高くなっている気がします。

エッジな人々
自分らしさを決めつけていたものは、完全になくなった
――確かに収録曲(※5)「オオセンチコガネ」「宇治川釣り日和」などは、趣味の曲なのに、不思議と意味があるように聞こえます。

竹原:あれもポコンと浮かんできたもので、「コガネ」の意味なんて糞虫なのに宝石みたいにキレイだなって(笑)。でも昆虫観察は、何かの本で「人と比べることはナンセンス」と読んで納得していて。虫ってただ生きて、食べて、増えて死んでいく。僕にはそんな悟りの境地のような生き方はできないから、見てると憧れとともに自分の小ざかしさやグダグダ考えてる部分が浮き彫りになる。「ゼッタイ歌で天下取ってやる」って揺るぎない気持ちで生きてるつもりでも、ものの2、3年前のことで「なんて俺は馬鹿だったんだ」って後悔の連続です。もし、いつかその憑き物が取れた時、その先の俺は昆虫みたいな歌を歌いそうじゃないすか?(笑)

――50歳って、“諦め始める年齢〟でもあるじゃないですか。でもピストルさん、まだ全然諦めてない。覚悟を感じます。

竹原:そうですね。今回のアルバム制作でも実感した瞬間があって。「これは最高のアルバムになる!」と確信したレコーディングの山場に、ふと昔とある先輩ミュージシャンが「歌は50歳からだよ」と話してくれたことを思い出したんですよ。「あたりまえの歌」という楽曲は、当初は韻を踏み倒すヘンテコな歌詞を書いてたけど、「あー俺ももうすぐ50だな」ってハッと思って。最終的に“死んだらもう歌えなくなるから、死ぬまで歌い続けよう”っていう強い言葉をフックにした曲を作りました。

――その先輩の言葉の真意は、見えてきているのですか。

竹原:実は俺、歌のコツをちょっと掴んできたというか。“こういうことだったらいいな”と思うものが一昨年ぐらいから出てきているんです。端的に言えば力抜いて、無理くり感情を込めることもなく、気持ちよーく、楽しーく、ただやりたいように歌えばいいんだと。前はライブでも「この部分は感情を込めてガツンと言わなきゃダメなんだ」と歌ってたことも、変に演じようとせず、作詞と同じく“これが竹原ピストルのイメージじゃないか”って考えていたことがまったくなくなって。こう歌いたいんだから、これでいいじゃないのって自由さが出てきたんです。ただ、ライブのお客さんは多分変わってないと感じてると思います。コイツ、相変わらずヘタクソだなと(笑)。

エッジな人々
“絶対にいつかゴールはある”と信じます
――演じない、ありのままの自分を出せることに俳優業から得た影響もあるんでしょうか。

竹原:昔はまったく切り分けていて、相互作用もないと思っていたんですけどね。でも、歌の中の僕と私自身は完全に一致する人間ではないんです。ただ歌っている時は歌の主人公になりきっているので、結果的にお芝居の仕事をするよりずっと以前から、歌の中で大なり小なり演じていたような気はします。

――50歳前と言えば、松本人志さんが(※6)『さや侍』にピストルさんを抜擢した年頃と同じです。舞台挨拶では「(後進への手助けを)竹原君がまた誰かにやってもらえれば」とありましたが、ご予定は?

竹原:ありません。やっぱり僕は自分のことしか考えてないです。僕が売れなくて何の意味があるんだ!というのが本音中の本音なので、人のことを考えている余裕は全然ないですね。

――すごい。正直ですね。

竹原:やっぱり、現状、自分で自分を認められていないですから。「オマエ、これすげえライブだよ、合格だ、素晴らしい」って思ったことは一度もないし、もうこれ以上の曲はできないだろうっていう歌を書いたこともないから、この先「よくやった。竹原ピストルは完成した」って思えるようになった時は、なんらかのケリがつくのでしょうし、人に何かを言ったり助けたりする余裕も出てくるのかもですが。

――完成するんですか? 虫になってしまうかもしれませんよ。

竹原:完成を前提にやらないと。「こういうものは一生かけても完成しない」って達観していたら多分何も達成できないので、“絶対にいつかゴールはある”と信じます。そのほうが道のりは楽しいじゃないですか。

【Takehara Pistol】
1976年、千葉県生まれ。ユニット「野狐禅」で’03年にメジャーデビューし、’09年の解散後はソロへ。むき出しの言葉と熱い歌声で支持を集め、’17年「よー、そこの若いの」で紅白出場。俳優としても、映画『永い言い訳』など演技面で高く評価される

(※1)『FIRST CRY!!』
5月27日発売の竹原ピストル8枚目のアルバム。7月からは5か月をかけ、47都道府県を巡る、全国ツアーの開催が決定している

エッジな人々
(※2)ボクシングのイメージ
拓大紅陵高校ではボクシング部の副主将を務め、道都大時代には全日本選手権に2度出場した経歴を持つ

(※3)BCリーグ
’06年設立の独立リーグ。ドラフト会議にかからなかった選手や中退など訳ありの選手たちが、NPBを目指し再起を図る地域密着のリーグ

(※4)野狐禅(やこぜん)
1999年結成。キーボードの濱埜宏哉(はまのひろちか)と竹原の編成で、むき出しの言葉を武器に青春の焦燥や生きることへの執念を歌った。’09年解散

(※5)オオセンチコガネ
動物の糞や死骸を餌にしながら“糞の中、しかし宝石のように輝く”ことが特徴の糞虫。「センチ」は便所を意味する“雪隠”に由来するともされる

(※6)『さや侍』
’11年公開、松本人志監督第3作。完成披露会見で俳優・竹原和生(竹原の本名)を抜擢した理由に松本は「才能のある人間が認められるべきだ」と語った

取材・文/村瀬秀信 撮影/コウ ユウシエン



―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

配信元: 日刊SPA!

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