こうした“カスタマーハラスメント”をする人のなかには、誰かを「いびる」ことで優越感にひたりたいという心理もあるのかもしれない。
以前、関西地方のコンビニに勤務していたサトウさん(仮名・30代・女性)が遭遇した、カスハラ中年女性とのトラブルエピソードについて語ってくれた。

◆ガラガラの店内にやってきたひとり客
いまから約2年前、専業主婦だったサトウさんは、隣町の市役所内にあるコンビニでアルバイトを始めたという。「私が勤務していたのは、主に平日のお昼から夕方までの時間帯。利用者は市役所の職員が多く、たまに近隣住民の方が訪れる程度でした。
ランチタイムにはお客さんが増えて少し混雑するものの、基本的にはのんびりした雰囲気で働きやすい環境だったのですが……」
サトウさんはそれまでコンビニでのアルバイト経験はなかったものの、徐々に仕事に慣れ、接客にも少しずつ自信を持てるようになっていたそうだ。
だが働き始めてから1か月ほどが経ったある日、ひとりの女性客の来店によって、その自信は打ち砕かれたという。
「たしか、ランチタイムのピークの時間帯が過ぎた午後3時ごろでした。来店したのは60代くらいの中年女性のお客様。足が不自由な様子で、杖をついていました。
脱色して明るくなった金髪のロングヘアをひとつに束ね、真っ赤な口紅を塗り、服装は、スパンコールがあしらわれた紫色のTシャツに黒のロングスカート。目つきは鋭くて、なんだか“異様なオーラ”を放っていたというか……。とにかくかなり目立つ人でしたね」
そのときはちょうど、もうひとりの男性アルバイト店員が休憩に入っていたため、店内にはサトウさんとその女性客のみだったのだとか。
その女性客は、杖をつきながらゆっくりと店内を見て回り、菓子パン1つと、ジュース1本を持ってサトウさんのいるレジにやってきたという。
「初めて見るお客さんだったので少し緊張しましたが、“落ち着いて対応すれば大丈夫”と自分に言い聞かせていました。
すると女性は、私の背後にあるタバコの販売スペースを指さし『あの青色のタバコ、ひとつちょうだい』と言ってきたんです」
◆「タバコのフィルムはがして」中年女性客の依頼に困惑
タバコの番号ではなく指さしで指示されて、どの商品を指しているのかはっきりとわからなかったというサトウさん。「私は困惑しながらも、『このタバコでいいですか?』とパッケージを見せ、間違いがないか確認したんです。
女性客はろくにこっちも見ずに『はいはい』と言いながら、カバンから財布を取り出して代金を支払いました」
緊張しながらも会計作業を終え、ホッとしたのも束の間。サトウさんはその直後、女性客から思わぬ依頼を受ける。
「その女性客に『私、指先があんま動かへんからタバコのフィルムはがしてくれる?』と言われたんです。
念のため『一度フィルムをはがすと、返品や交換はできなくなってしまいますが、よろしいですか?』と確認すると、その女性の顔色がみるみる険しくなっていって……。
『はぁ!? ごちゃごちゃうるさいな! いいから早く開けんか!』と、私を怒鳴りつけてきました。
すごい剣幕だったので、慌ててフィルムをはがして開封したんです。すると、それまで怒りに満ちていた表情がスッと消えて……。口元には笑みが浮かんでいたような気がします」
このド派手な中年女性客が、理不尽な言いがかりをつけてきたのはそのすぐ後だったという。
「とぼけた声で『あれぇ? おかしいわ~。これ、私がほしいやつと違うんやけど。もう開けちゃったし、これは売りもんにならへんもんなぁ。なら仕方ないからもらっとくわ』と言い出したんです。
さらに『私が吸うやつは“27番”のやつやから、それちょうだい』と、新しいタバコを渡すよう、私に要求してきました。
女性客は私のミスだと言い張り、代金を支払わずに新しいタバコを求めてきたわけです。
私は努めて冷静に『申し訳ございませんが、それはできません。こちらもお客様にきちんと確認しておりますので』と説明しましたが、女性客の怒りは収まらず……。『ふざけんじゃないよ!』と、また怒鳴られてしまいました」

