◆奪三振率減少でも成績向上の理由とは
一方で、奪三振率は数字を下げている。1年目からの奪三振率を並べると、10.50→10.42→8.40と推移。これだけ低下しているにもかかわらず、防御率や投球内容はむしろ向上しているが、これは山本が「空振りを奪う投手」から「打者に正解を与えない投手」へと進化していることを示している。球種割合の変化を見ると、その理由が見えてくる。
【山本由伸、過去2年の球種割合(Baseball Savantより)】
<2025年>
フォーシーム 35.2%
スプリット 25.5%
カーブ 17.6%
カット 11.2%
シンカー 7.8%
スライダー 2.8%
スイーパー 0.0%
<2026年>
フォーシーム 28.2%
スプリット 26.9%
カット 13.6%
カーブ 13.1%
シンカー 11.8%
スライダー 6.5%
2025年に1球だけ投じたとされるスイーパーを除けば全6球種は同じだが、その割合は微妙に変化している。30%を超えていたフォーシームは28%台に減少したが、フォーシームの平均球速と回転数は上昇しており、その威力は決して悪化しているわけではない。
逆に、フォーシームの「Whiff%」(スイングに対する空振り率)は19.2%から31.3%に大幅良化を果たしている。
つまり、フォーシームの投球割合は下がったが、空振り率は大幅に向上しているのだ。これは球威そのものの向上に加え、打者がフォーシームを待ちづらくなっていることを示唆しているのではないだろうか。
◆スプリットを生かすカットボールの存在
続いて変化球の割合の推移を見ると、カット、シンカー、スライダーという横に変化する球が多くなっている。今季特に目立つのが、決め球のスプリットを最大限生かす役割を果たしているカットボールだ。カットボール自体の被打率は.310と決して優秀とはいえない。この球種の価値は被打率だけでは測れない。山本の投球に幅をもたらし、打者の球種予測を難しくしているのではないだろうか。
伝家の宝刀とも呼ばれるスプリットとこのカットボールの今季の平均球速を比べると、前者が91.4マイル(約147.1キロ)で、後者は91.3マイル(約146.9キロ)とほぼ同じ。しかし、両球種の軌道は全く異なる。
山本自身、メジャー1年目はカットボールを6.1%しか投じていなかったが2年目に11.2%と大幅増。さらに今季はその割合を増やしている。あくまでも仮説だが、この球種がスプリットとの見極めを難しくする役割を担っているのかもしれない。

