脳トレ四択クイズ | Merkystyle
「どうにかしてよ!」84歳母を看取った56歳娘の絶叫。〈死亡保険金1,000万円〉を巡る“保険ショップのグレーな説明”を信じた親子の誤算

「どうにかしてよ!」84歳母を看取った56歳娘の絶叫。〈死亡保険金1,000万円〉を巡る“保険ショップのグレーな説明”を信じた親子の誤算

生命保険文化センターの18歳から70代の男女を対象とした「2025年度 生活保障に関する調査」によると、全体の70.9%もの人が「保険に関する知識に詳しくない」と自覚しています(※)。さらに、「金融に関する知識」についても71.0%が「詳しくない」と回答しており、主観的な自己評価だけでなく、基本的な生命保険や金融に関する知識量を測るテストでも、全世代の平均正解数は6問中わずか2.2問にとどまっているのが実態です。このように、世代や性別を問わず多くの人が金融や保険の知識に不安を抱え、知識が不足していることから、一部のメリットだけを鵜呑みにしてしまう罠に陥りやすい実態があります。事例をみていきましょう。※「あまり詳しくない」「まったく詳しくない」の合計。

過酷な在宅介護の日々と、心の支えだった「1,000万円」

独身のユリ子さん(仮名/現在56歳)が、長年勤めていた会社を退職し、実母の在宅介護を始めたのはいまから5年前のことでした。当時79歳だった母親に認知症の症状がみられはじめ、足腰の衰えも顕著になったため、ユリ子さんはキャリアを諦めて実家へと戻る決断をしたのです。

生活が一変し、先行きのみえない不安に駆られていたユリ子さんに対し、母親は申し訳なさそうな、けれどどこか安心させるような表情でこう語りかけました。

「ユリ子、私のために仕事を辞めさせてしまって本当にごめんね。でもね、お金のことはあんまり心配しないでね。この家も残せるし、生命保険に入っているから。保険ショップの人がね、『生命保険は非課税だからいいですよ。娘さんに全額綺麗に遺せますよ』って太鼓判を押してくれたの」

母からいわれた保険証券を確認すると、死亡保険金が1,000万円とありました。これを受け取るときには母との別れがつきものですが、介護を担うユリ子さんの心の支えとなったのも事実です。

それからの5年間は、自宅で最期を迎えたいという母の意思を尊重したユリ子さんにとって、心身ともに壮絶な日々でした。

母親の認知症は徐々に進行し、夜間の徘徊や、排泄の失敗、感情の起伏に振り回される毎日。自分の時間はすべて消え去り、かつての同僚たちが社会で活躍していくのを遠くにみつめながら、実家の中で社会から孤立していくような強い孤独感と戦い続けました。

そしてある春の朝、母親は84歳で静かに息を引き取ります。

保険金の受け取りと、背後に迫る「相続税」

葬儀を無事に終えたユリ子さんは、保険会社への手続きを行い、口座に1,000万円の死亡保険金が振り込まれたことを確認しました。通帳の数字をみて、ようやく5年間の重荷が降りたような、深い安堵感に包まれたといいます。

しかし、その安堵は長くは続きません。実家の土地の件も含めて、遺産整理のために紹介された税理士のオフィスを訪れた際、思いもよらない事実を知ったのです。

「お母様の遺産ですが、相続税の申告と納税が必要になります」

ユリ子さんは耳を疑いました。「保険は非課税じゃないの!?」思わず税理士に詰め寄ります。

日本の相続税には、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

という基礎控除があります。一人っ子であるユリ子さんの場合、基礎控除額は3,600万円です。税理士が母親の資産を精査したところ、近年の地価上昇による実家の土地・建物の評価額、手元に残された預貯金、そして1,000万円の死亡保険金を合算すると、総資産がこの基礎控除額を大きくオーバーしていることが判明したのです。

生命保険には確かに「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、ユリ子さんの場合は500万円が控除されますが、それを差し引いたとしても、残りの500万円分はそのまま相続財産に加算されてしまうのが制度のルールです。

特例を適用してもなお、課税を免れなかった現実

動揺するユリ子さんに対し、税理士は一つの選択肢を提示しました。ユリ子さんが仕事を辞めて実家に戻り、亡くなるまで母親と同居して在宅介護を行っていた実態があったため、相続税の負担を大きく軽減できる「小規模宅地等の特例」が適用できる可能性が高いというのです。

この特例は、亡くなった人と同居していた親族が自宅の土地を相続する場合など、一定の要件を満たすことで、土地の相続税評価額を最大80%減額できるというものです。ユリ子さんのケースでも、この特例を活用して実家の土地の評価額を圧縮する方向で手続きを進めることとなりました。

しかし、この特例はあくまで「土地の評価額」を下げるためのものに過ぎません。いくら土地の価値を低く抑えたとしても、手元に残る預貯金の額や、非課税枠を超えて財産に算入された分の死亡保険金の総額が大きく、それらの合計が基礎控除額を上回ってしまえば、相続税の課税を免れることはできないのです。

今回の事例でも、土地の優遇措置をフルに活用したものの、ほかの財産との兼ね合いから最終的な課税対象額が基礎控除の枠内に収まりきらず、結果として、ユリ子さんには、受け取ったばかりの保険金のなかから、相続税を支払わなければならない義務が生じてしまったのです。

あなたにおすすめ