アメリカでは近年、キャッシュレス化が急速に進められてきました。元々クレジットカード文化が深く根付き、100円程度の支払いにすらカードを使うのは長きにわたって普通のことです。そしてここ数年はプラスチック製カードに代わり、スマートフォンをかざして支払うのが日常の光景になりつつあります。
一時は「支払いはキャッシュレス決済のみ」という店舗まで現れるほどになり、財布を持たない現金不要社会へ向かうかのように見えました。しかしここにきて、その流れに変化が生じています。「キャッシュレス時代に逆行?」とも取れる動きの背景を紐解きます。
キャッシュレス化が急速に進んだ米国
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日本でもPayPayなどの普及とともに、現金を使わずに買い物を済ませる場面が増えています。フィンテック先進国のアメリカでも、キャッシュレス化はものすごいスピードで進んできました。
クレジットカード発祥の国として、もともとクレカ文化が日本以上に深く根付き、人々は(以前は1ドル台だった)コーヒー1杯ですらクレカを利用してきました。大金を持ち歩かない文化やキャッシュレス化は、治安面とも関係しています。
筆者が移住した2000年代初頭でも、100ドル以上の現金を持ち歩いた記憶はそれほどなく、唯一コインランドリーの時だけクオーター(25セント硬貨)を大量に用意した記憶があります。
■過去記事
財布を忘れたことで誕生したクレカ?クレジットヒストリーって?米国でなぜ重要なのか、分かり易く解説
キャッシュレス化をさらに推し進めたのはコロナ禍です。衛生上の理由から人々は現金を、ひいては財布をほとんど持ち歩かなくなりました。こうしたことから非接触決済(tap to pay)、モバイル決済が急速に普及し、今ではスマホをピッとかざして支払う姿が日常になっています。
ニューヨークの公共交通機関を運営するMTA(Metropolitan Transportation Authority)では2026年1月1日から、以下の記事でも触れた新・決済システム、OMNY(オムニ)へ本格的に移行となり、地下鉄やバスの乗車がさらに便利になりました。わざわざ乗車券を購入する手間が省け、また一定回数以上乗車するとその週の追加乗車分が無料になるメリットがあり、日本人観光客にも好評です。
■過去記事
アメリカの最新キャッシュレス事情。みんなどれで支払ってる?
現金不要社会へ一直線、ではない?
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ここまで書くと、まるで現金不要社会へ一直線で進んでいるかのように聞こえるかもしれませんが、そうとばかりは言えません。
例えば、ニューヨーク市内の有名ステーキハウス、ピータールーガーはいまだに「クレジットカードは受け付けない」ポリシーを貫いています。外国の旅行者が食事をするには、決して少なくない現金を事前に用意しなければならず、やや面倒ですがそれでも店はいつも繁盛しています。
ホテルの清掃員やポーターへのチップ、路上や地下鉄のパフォーマーへのチップ(投げ銭)もまだ現金が主流です(VenmoやZelleなどの送金サービスを利用する人も時々見かけます)。一部のスーパーやドラッグストアではレジ&セルフレジ共にまだ硬貨が使えます。
しかし以上のようなケースは主流とは言えません。大都市では「キャッシュレス化が主流になっているが、いまだ現金が主流のシーンも根強く残っている」という説明が、より現状を表すものとして適切でしょう。