◆対話を通じて生まれるファンとの絆

鈴瑚:もちろん、ないことはないですよ。SNSでコメントが寄せられたり、DMが送られてきたり……。ただ意外と、目についた場合はこちらからコメントを返すと、「そういうつもりで言ったんじゃないんです、すみません汗」みたいな反応になることも多くて、意外と理解してもらえるもんだなぁなんて思っています。
ライブはいろいろな地下アイドルがタイムテーブルを組んでパフォーマンスをしますが、「いい年していつまでやってんの?」と話しかけてきた別グループのファンに応対したことがあります。そのあとライブを見てもらったら、「さっきはごめん、あんなにいいパフォーマンスをすると思わなくて……」とおっしゃっていて、それから律儀に通ってくれたこともあります。話してみると結構わかってもらえるんですよね。
――寛大ですね。
鈴瑚:自分が何か言われるのはまったく辛くないんです。ただ、応援してくれるオタクの人たちが「なんで熟女アイドルなんて推してるの?」と直接言われたり、奇異の目で見られるのは、申し訳ない気持ちになります。だからこそ、きっちりライブで魅力を伝えられるように努力してきたつもりです。
――いわゆるオタクの方たちとの絆も深い。
鈴瑚:そうですね。私は真剣に、アイドルとオタクの関係性ほど誠意があるものも少ないと考えているんです。恋愛も最初の半年、1年は特別扱いをしてくれたりしますが、やがて日常に埋没しますよね。アイドルのライブのために、オタクは時間とお金を使って毎回足を運んでくれるんです。この関係性はとてもピュアなものです。
オタクの皆さんに支えられてここまできた身としては、あんなに純粋な人たちは少ないと言い切れるし、逆に自分たちも彼らに恥じないように魅せるパフォーマンスをしたいと思ってきました。
◆ミドル世代の夢を支える次のステージ
――引退後の展望をお聞かせください。鈴瑚:これまでの活動で学んだことを生かして、ライブの運営をお手伝いすることが1つです。それからもう 1つは、私と同じようにミドルエイジでアイドルやシンガー、モデルなどを志望する女性のためのサポートをしたいと考えています。特に芸能界は魑魅魍魎の世界で、夢を食い物にする大人がたくさんいます。私は、必要な費用からかけ離れた金額を請求しない、まっとうなアカデミーを開講しようと考えているんです。ある程度の年齢がいっていても芸能界を目指せる環境を整えられたら、それが私なりのこの業界への恩返しになると思っています。
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言ってみれば鈴瑚さんの母親は「母親らしくない母親」。それでも鈴瑚さんは愛情の痕跡をみつけ、亡き母親を慕う。人の欠点よりも美点に目がいくことは、アイドルとしての資質であり、彼女の無限の包容力を培ううえで大切な性質だっただろう。アイドルもファンも、いろいろな人がいていい。鈴瑚さんの自由な発想の根底に、すべての人への愛情をみた。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

