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AIに作らせた資料が“ちっとも頭に入らない”のはなぜ?米名門大学がAIを「原則禁止」にした本質

AIに作らせた資料が“ちっとも頭に入らない”のはなぜ?米名門大学がAIを「原則禁止」にした本質

シアトルの職場では、AIを使わない日がほぼなくなりました。朝イチで開くメッセージアプリには、AIが秒速でまとめた会議サマリー。企画書の初稿はAIが叩き台を作り、メールの文面も「ちょっとAIに整えてもらった」ものが行き交う。

しかし、文章はどれも非の打ち所がないほど整っているのに、読んでいてちっとも頭に入ってこない。送り主の顔が見えないというか、熱量がミリも伝わってこない資料が、なんとなく増えています。読み終わったあとに、その人と会話した気がしない。そんな文章です。

もちろんAIを使うこと自体は悪いことではありません。ぼくだって毎日使っています。でも最近、「便利になった」と感じる回数と同じくらい、「自分たちは本当に考えているんだろうか」と感じる瞬間が増えました。

「AIを使いこなせる人が生き残る」という話は、この数年でほぼコンセンサスになりました。でも、AIを使えば使うほど仕事が良くなっているかというと、どうもそんな実感がない。そんな違和感を抱いていたころ、AIの聖地・サンフランシスコ湾岸にある名門大学が、この流れに真っ向から冷や水を浴びせました。

◆■バークレーが下した「原則禁止」という決断

画像/Adobe Stock
カリフォルニア大学バークレー校のロースクールは、2026年の夏学期から、単位取得に関わるあらゆる課題と試験におけるAIの使用を原則禁止にしました。授業によっては教員の判断で例外を認めることもできますが、デフォルトは「禁止」です。

禁止の範囲が、なかなか徹底しています。アイデアの構想、アウトライン作成、下書き、修正、翻訳、文法チェック。AIが介在できる余地を、ほぼすべて塞いだ格好です。試験中はいかなる目的でもAI使用は認められません。

ポリシーを策定したHoofnagle教授は、その意図をこう語っています。「学生がAIのアイデアを再パッケージするだけでなく、自分自身の判断力を使う方法を教えるのが目標だ」と。そして、バークレー自身がポリシーの中でこう明言しました。「思考することは、良い弁護士であることの必要条件(sine qua non)だ」と。

ここで少し注目してほしいのは、この言い方です。「思考力があれば良い弁護士になれる」ではなく、「思考力なしには良い弁護士にはなれない」。この言葉が意味するのは、AIを使う能力の話ではありません。AIを使いこなすための前提条件の話です。

なお、バークレーはけっしてAIを敵視している大学ではありません。同校はAI専門の法学修士プログラムを持っており、AI時代の法曹育成を積極的に研究している機関でもあります。バークレー自身もFAQで「AIを禁止するのか? いいえ」と明言しています。

◆■「AIを使い続けた脳」に何が起きるか

当然ながら、アメリカ国内でもこの決定への反応は賛否が割れています。

法曹テクノロジー専門家のBob Ambrogi氏は批判的です。「批判的思考とAIスキルは同時に教えられるはずで、3年間まるごとの一律禁止は広すぎる」と指摘し、「2025年時点のAIを想定して設計されたポリシーは、技術の進化とともに機能しなくなる」とも述べています。

一方、バークレーの決定とは別に、こうした問題意識を裏付けるような研究結果も出ています。

MITメディアラボが2025年に発表した研究では、MIT・ハーバードなどボストン圏の学生を「AIを使って文章を書くグループ」と「自分の頭だけで書くグループ」に分けて脳波を計測しました。AIを使い続けたグループほど脳の活動が弱く、文章も平板で、書いた内容を自分で思い出せないという結果が出ました。さらに、AIを取り上げて「今度は自分で書いてください」と指示しても、脳がなかなか自力で動くモードに戻れなかったといいます。

ところが、もう一つの結果が面白かった。最初から自分の頭で書き続けていたグループは、後からAIを使い始めたときに脳の活動がむしろ高まり、AIの提案を自分なりに評価しながら使いこなしていたのです。

研究者たちはAIへの依存によって独力で考える能力が萎縮していく現象を「認知負債(cognitive debt)」と名付けましたが、逆に言えば、自分の頭で考える訓練を積んだ人ほど、AIを道具として使いこなせるということでもあります。

わかりやすく言えば、カーナビを使いすぎて地元の道すら覚えられなくなる、あの感覚の脳内アップデート版です。でも、地図を読む力のある人は、カーナビが示したルートに疑問を感じたときに「この道のほうが早い」と判断できる。AIも、自分の頭で考える力を持つ人が使って初めて、本当の意味で「使いこなせる道具」になるのかもしれません。

シアトルで働いていても、似た場面を見ます。AIに企画書を書かせることは誰でもできる。でも、その企画の前提が間違っていることに気づける人は意外と少ない。AIの答えを作る力より、AIの答えを疑う力のほうが難しい。最近はそんな気がしています。


配信元: 日刊SPA!

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