経験価値を売る視覚と物語の戦略
フランスのビジネススクールの名門、HEC経営大学院のジャン・ノエル・カプフェレ教授は、「ブルー・ド・メール」を“ポスト・テロワール”ブランドと定義する。これは、ワインの価値を醸造学的数値や厳格な格付けではなく、消費者の「感情」や「生活様式」に紐付けて作り上げる手法だ。
その象徴が視覚戦略で、瓶にはワインの淡い色調を際立たせるエクストラホワイトガラスの瓶を採用し、ラベルには南仏のビーチキャビンやヨットを想起させる青と白の横縞模様を施している。このデザインは、SNSを通じたデジタル広報とも連動しており、インスタグラム等の映像によって「地中海の光と風」という物語を、抜栓前から消費者に刷り込むことに成功している。
ベルナール・マグレ氏は、「ワインは日常生活の伴侶でなければならない」と断言する。格付けシャトーが「特別な瞬間のための贅沢」を売るならば、ブルー・ド・メールは「日常の中の小さな解放」を売る。この二極の戦略こそが、マグレ氏が描く現代ワインビジネスの核にある。市場が複雑化し、伝統的な価値観が揺らぐ中で、「ブルー・ド・メール」の躍進は、これからのワインブランドビジネスを進める上でのひとつの道筋を提示している。

