ポイント2:夜間対応型訪問介護が廃止
介護保険制度の見直しを繰り返した結果、サービスは充実しました。一方で、制度全体は複雑化しています。とくに夜間対応型訪問介護は定期巡回・随時対応型訪問介護看護と機能の重複が指摘されていました。
改正での変更点
- 夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に統合
──夜間対応型訪問介護の廃止・統合をどう受け止めていますか?
夜間対応型と定期巡回の機能はほぼ同じだったので、今回の統合は増えすぎたサービスを整理する象徴的な事例だと感じています。
オンコールを受けて訪問する夜間対応型と、定期訪問と緊急対応を兼ねる定期巡回。形式は違っても、どちらもやってることは同じだったんです。
──現在の介護保険サービスは統廃合が必要なほど複雑なんですか?
もう「がんじがらめ」という状態です。コード表を見るだけでも大変なくらい種類があるんです。社会状況の変化に対応するために、細かい変更や追加を繰り返してきた結果ではありますが、将来的にはさらに整理されていくでしょう。
──夜間対応型の廃止で利用者や従業員への影響はありますか?
夜間対応型がなくなっても、定期巡回や別の枠組みで対応できるので、利用者が困る場面は少ないと思います。夜間対応型の利用者は、吸入や人工呼吸器をつけているような、医療的なニーズがある方が多いですが、定期巡回もこれらの医療的ケアに対応しています。
従業員にとっても大きな影響はないと思います。夜勤専門のスタッフを置くわけではないので、統合されても働き方は変わりません。定期巡回をおこなっている事業所にとっても、新たに夜勤担当者を増やす必要はないので負担は大きくないでしょう。
ポイント3:中山間・人口減少地域に「特定地域サービス」を創設
これまで介護サービスは、全国一律の基準に基づいて提供されてきました。しかし中山間・人口減少地域では、介護ニーズの縮小やサービスの担い手の不足などにより、事業所が運営を続けられなくなるケースが生じています。
改正介護保険法では基準の一部を緩和し、このような地域での介護サービスの維持を図ります。一方、特例を設けることが、サービスの質や職員の労働環境の低下を招くのではという懸念の声も上がっています。
改正での変更点
- 特定地域サービスでは全国一律の人員配置を緩和
- 特定地域サービスでは出来高報酬か月ごとの定額報酬を選択可能に
- 市町村が地域支援事業として居宅サービスなどを実施可能に
──特定地域サービスの創設についてはどう評価しますか?
遅いぐらいだと感じます。「制度あってサービスなし」といわれるような地域こそ、暮らしを支える仕組みが必要です。対象地域は市町村の意向が反映されますし、大小の島々や山間部などの地域を国民みんなで支えるのは当然のことで、不公平だという話ではありません。そのくらいの共通認識がなければ、地域福祉は成り立ちません。
例えば同じ東京都でも、都心部と奥多摩や青梅では訪問にかかる時間やコストは違いますよね。伊豆大島や小笠原といった島ならなおさらです。介護保険制度は全国一律とはいっても、現実には地域差があるのですから、このくらいの柔軟性があってよいと思います。
──月ごとの定額報酬も選べるようになるのですが、今の全国一律の報酬体系では対応できないのでしょうか?
限界があります。中山間地域では移動時間も移動費もかかるのに、出来高払いでは訪問回数の少ない地域は収入が上がらない。定額報酬を選択できる仕組みは、経営の予算が立てやすくなるという意味でも有効です。
──特定地域では市町村の事業として、介護サービスを提供することも可能になります。介護事業所を運営する自治体が増えるのでしょうか?
介護保険制度が始まる前は、ホームヘルパーを自治体職員として雇用していた時代もありました。民間事業者が撤退してしまった地域では、保険者である市町村が責任を持ってサービスを提供することが求められます。資本の原理では回らないところに、行政が最後まで責任を持つ。その代わり住民には負担もお願いしますということですね。
──そうなると住民側の理解や協力も必要になりますね。
そうですね。行政がいくらやろうとしても、住民が「そんな高い保険料は払いたくない」と言ったら成り立ちません。だからこそ、住民と行政がしっかり話し合って「これからの地域の暮らしをどうしていくか」を一緒に考えることが、今後の地域福祉にとって最も重要ではないでしょうか。
参考
- 厚生労働省|社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要
- 厚生労働省|介護保険制度の見直しに関する意見
- 厚生労働省|有料老人ホームの現状と課題・論点について
- 厚生労働省|有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会とりまとめ

