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『地面師たち』リアルな現実は「驚くほどテキトー」だった。55億円詐取の連絡役が明かす、犯行の裏側と転落劇

『地面師たち』リアルな現実は「驚くほどテキトー」だった。55億円詐取の連絡役が明かす、犯行の裏側と転落劇

55億円という巨額の詐欺を現実にした、積水ハウスの地面師たち。Netflixのドラマが大きな話題を呼んだが、犯人たちのリアルな素顔を追ったひとりの女性記者がいる。河合桃子氏だ。総勢17人が逮捕されたこの事件で、実行犯のひとり「連絡役」を中心に、時に対面で、時に獄中の主犯格への手紙を通して、約2年にわたり取材を重ねて書き上げた『地面師連絡役カトウ』は、小学館ノンフィクション大賞を受賞した意欲作だ。刊行を記念して、河合氏による特別寄稿を掲載する。

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積水詐欺事件直後のカミンスカス操(当時の名前は小山操)。「豪遊ぶりは凄まじかった。浅草のフィリピンパブなどで毎晩のように数百万円を散財。お気に入りパブ嬢は小山ガールズなどと呼ばれていた」(河合氏)

◆55億円詐取直後の記憶。報酬は2億

 白い紙の手提げ袋をふたつ提げた中年男が、都営新宿線・森下駅近くの交差点でタクシーを拾おうとしていた。袋の中身は、積水ハウスから騙し取った55億円のうちの2億円。1000万円の束が透明なビニールで横二列にパッキングされた、むき出しの“ゲンナマ”だ。すれ違う通行人に覗かれれば一巻の終わり。男はソワソワと落ち着かなかった。

「もう家には帰れない」

 そう思いながら男はタクシーで新宿へ向かい、憧れだったパークハイアット東京に逃げ込んだ。だが部屋で札束を眺めるうち、込み上げたのは喜びではなく、自分自身への怒りだった。「ちくしょう!」と叫び、札束をベッドに投げつける。

 これが、私が2年ほど向き合った男――2017年の積水ハウス地面師詐欺で「連絡役」を担った、カトウ(仮名)である。

◆綾野剛が演じた交渉役の〝素顔〟

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地面師連絡役カトウ本人。「ぱっと見は人当たりの良さそうな中年男性でした。取材当初は取材に協力的だったのに、だんだん事件の話が深くなったり自身の話に及ぶと乗り気ではなくなっていった」(河合氏)
 初めて会ったカトウは、巨額詐欺の実行犯にはおよそ見えないごく普通の中年男だった。身長170センチほどのガッシリした体型に、下がり眉の人の良さそうな顔。逮捕されたのは総勢17人。起訴・服役した10人のなかで唯一、自ら警察に出頭した男だ。

 取り調べで、刑事に開口一番こう尋ねたという。

「この事件で、死人は出ていませんか」

 被害に耐えかねた積水社員が自殺していたら――そう思うと怖かったのだという。

「俺は結婚もしてないし、子供もいない。守るものがないから、犯罪に身を沈めてしまった」

 巨額詐欺の犯人とは思えない、奇妙な良心と小者ぶり。私はこの男から目が離せなくなった。


配信元: 日刊SPA!

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