◆季節外れの衣類や布団を洗って預けられるランドリー
インバウンドで賑わう東京・秋葉原駅。駅前のにぎやかな通りを抜け、数分ほど歩いたところに、一軒のコインランドリーがある。名前は、「LAUNDRY MORE(ランドリーモア)東神田店」。一見何の変哲もないランドリーだが、建物の外観をよく見ると、ランドリーの上に「トランクルーム」の文字が躍っていることに気づく。

しかも経営するのは、洗濯事業者ではない。トランクルームを主事業とする押入れ産業だ。従来「コレクション置き場」としてのイメージが強かったトランクルームだが、同社店舗開発事業部の小柳晃さんによれば、利用用途は多様化している。「ランドリーモア」1号店が山形県天童市内にオープンしたときには、働く女性がコインランドリーで洗濯した衣類や布団をそのままトランクルームに預けていくパターンが目立ったという。
「洗濯乾燥機を自動でまわすと1時間程度で終わるぶん、『時短』になるという点を魅力に感じてもらっているようです。家の押し入れは湿度が高くなりがちですが、トランクルームは空調が24時間稼働しているので、衣類を保管しやすい。特に春から夏にかけては、コートやセーターなど厚手の衣類をボックスに入れたり、ハンガーで吊るしたりして保管されるかたが多いです」
◆個室の4分の3は成約済み……着目したのは顧客同士の「親和性」



ランドリーモア東神田店には洗濯から乾燥までを一度に済ませられる洗濯乾燥機(小・中・大)と中型の乾燥機、靴専門の洗濯乾燥機が並ぶ。これらはすべて、押入れ産業が販売代理店として契約を結んでいる業務用洗濯機メーカー・TOSEIのものだ(※社名は’26年7月より「エレクトロラックス・プロフェッショナル」に変更予定)。
TOSEIの調べによると、’99年時点で全国に1万1843店あったコインランドリーは、’21年時点で約2万5000店と、2倍以上に増えた。同社では異業種でも参入しやすく、安定的な収益が見込める事業としてコインランドリー事業の併設を推奨しており、これまでも大手飲食チェーンや自動車販売店などがコインランドリーの併設事業に参入している。

「感染症の拡大により景気が低迷する反面で、とくに’20年4月の緊急事態宣言発令以降は衛生管理意識が強まり、普段は洗えないふとん洗濯の需要が高まって、売上を伸ばしたランドリーが多くありました。コロナ禍が明けてからも人件費の高騰が続いたことなどもあり、無人で運営できるランドリーと他のビジネスとの組み合わせが増えていきました」




同店スタッフの三角(みすみ)陽子さんによれば、利用客の約9割はカフェ利用が目的。ランドリーは近隣に住む住民のほか、洗濯機が壊れたり、引越しして間もないため家具が利用できなかったりと、よんどころない事情ができたときに使われることが多いのだという。
同店の企画・運営を行うグランドレベルの大西正紀さんは、ランドリーは「赤字にならない程度の運営ができればいい」と笑う。
「私たちはもともと、建物や街をデザインする会社です。『喫茶ランドリー』は、家事やイベントもできる『超多機能スペース』であり、地域の『私設公民館』のような場所を目指しています。『喫茶ランドリー』は会社のアイコンであるとと同時に、新しいことを試す『実験場』のような位置づけなんです」

