板挟みの末に選ばれた「排除」
ある日、カズサさんは他県に住む親戚と会うことに。その際、見せられたのは、都内のホテルで執り行われたという、ミノリさんの華やかな結婚式の写真でした。
「席が足りない」はずの会場には、他の叔父や叔母、その子どもたちまで、親族が漏れなく笑顔で写っています。呼ばれていないのは、本当に自分一人だけでした。
裏切られた怒りと屈辱に震えながら、カズサさんはすぐに実の娘(ミノリさんの母親)の携帯を鳴らしました。受話器越しに激しく問い詰めるカズサさんに対し、娘はひたすら気まずそうに、本音を漏らしました。
「でもさ、ミノリの意志が本当に固くて、どうしても『おばあちゃんを呼ぶなら式は挙げない』って譲らなかったのよ。ミノリ自身もお相手も高給取りだし、援助は必要ない、自分たちの力で式を挙げるっていうし。お母さん、昔から、あの子より息子(カズサさんの孫息子)のことばかり可愛がってたじゃない? あの子の式だから、あの子の気持ちを無視するわけにはいかなくて……」
カズサさんは激しい困惑のなかで、湧き上がる怒りを必死で抑えるほかありませんでした。
「だからって、こんな形で仕返し? 祖母なのに、こんなに恥ずかしいことはない……。私はあのとき、孫息子の学費でお金が必要だと思ったから融通しただけで、差別したわけじゃないのに。どうしてそんな風に受け止めるの……」
ミノリさんが祖母を拒絶した本質は、やはり金銭的な損得勘定ではないでしょう。どれだけ学業を頑張っても、どれだけ良い子にしていても、常に弟の後回しにされ、日常の端々で「女の子だから」と片付けられてきたこれまでの記憶。その積み重ねが、彼女を頑なな拒絶へと走らせたのかもしれません。
手元には、使い切れないほどの8,000万円という大金と、毎月振り込まれる年金があります。しかし、自らの無自覚な偏見によって家族の信頼を失った彼女の周りには、誰も寄り添おうとはしません。お金で買える不自由のない暮らしに囲まれながらも、誰からも必要とされない寂しさに包まれる老後となってしまったようです。
