
韓国の自殺死亡率が高いことは、耳にしたことがある人も多いかもしれません。では、働き盛りの20代・30代よりも、80代以上の高齢者の自殺死亡率が高いことはご存じでしょうか。本記事では、高安雄一氏の著書『解説 韓国経済-第二版』(学文社)より一部を抜粋・編集。韓国の年金制度や子ども世代の経済状況から、高齢者の自殺率がなぜ高くなるのかを考察します。
2010年代以降は格差が縮小。所得格差がすごく大きな国ではない
ジニ係数によれば、韓国はOECD加盟国のなかで、それほど所得格差が大きいわけではありません。また1990年代から2000年代にかけて所得格差は緩やかに高まってきましたが、2010年代以降は、所得格差が縮小していると考えられます。
所得格差を測るための尺度としてはジニ係数を使うことが一般的です。ジニ係数はゼロから1までの値をとり、0に近づくほど平等で、1に近づくほど不平等なことを意味します。
世帯の可処分所得のジニ係数からOECD加盟国の所得格差を国際比較しましょう。
2022年の数値は、韓国が0.324であり34カ国のなかで、高い方から数えて13位です。順位からだけみると韓国は所得格差が大きな国という印象を受けますが、韓国も含めた6位以下の国のジニ係数には大きな差がなく、いわゆる団子状態で分布しています。
韓国より順位が8つ高いアメリカと韓国のジニ係数の差は0.072ポイントですが、この差は大きいと言えます。仮に韓国のジニ係数が0.072ポイント下がれば、順位は30位まで下がります。OECD加盟国のジニ係数の平均値やばらつきの程度を示す標準偏差から判断するならば、コスタリカとチリは所得格差が大きな国、トルコ、メキシコ、アメリカは所得格差がそこそこ大きな国であり、韓国の所得格差はそれほど大きくないということができます。
韓国におけるジニ係数の動きを「家計動向調査」で把握した所得からみると、1990年代から2000年代にかけて緩やかに高まりました。なお2016年からジニ係数を算出する所得を把握する統計が「家計動向調査」から、「家計金融・福祉調査」に変更されました。さらに、可処分所得から私的移転(家族間の仕送りなど)が除かれました。この新しい基準でのジニ係数から判断すれば、2010年代以降は所得格差が縮小しています。
[図表1]OECD 加盟国のジニ係数〈等価可処分所得〉:2022年 (注) チリ、アイスランド、日本、スイスおよびトルコは2015 年、ニュージーランドは2014 年の数値。
(出所) OECD データベースにより作成。
[図表2]韓国のジニ係数〈等価可処分所得〉:1990~ 2024年 (注)「 家計動向調査」の全世帯の数値は2006年から、「家計金融・福祉調査」の数値は2011年から公表されている。「家計動向調査」の数値は2016年で公表終了。(出所) 統計庁「家計動向調査」および「家計金融・福祉調査」により作成。
【自殺死亡率】高齢者を中心に自殺死亡率が高く、OECD加盟国でワースト1位
韓国の自殺死亡率はOECD加盟国で最高となっています。日本は韓国より自殺死亡率が高い状態が続いていましたが、2008 年以降は韓国が上回っています。年齢階級別には、80歳代以上の自殺死亡率が突出していますが、その背景には高齢者の経済的困窮があるようです。
OECD加盟国の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)をみると、韓国は2016年で24.6と最も高い国となっています。日本と比較すると、1990年代初頭には、日本の自殺死亡率は韓国の2倍ほど高かったのですが、その後は差が縮小していき、2008年には韓国が上回っています。
韓国では、1990年代中盤から自殺死亡率が高まり、1998年には通貨危機後の景気悪化もあり高まりました。その後はいったん低下したものの、2000年以降は再び急激に高まり、リーマンショック直後の2009年には30を超えました。2010年代に入り下落に転じ、2012年には30を切りましたが、それでもOECD加盟国で最高の自殺死亡率となっています。
