◆「事実無根の投稿」が送検されるまで
――先ほどのお話は、犯罪被害者としてのスタンスの違いと受け止められる部分もありますが、一方で、完全な誹謗中傷に該当するものも経験されたとか。小沢樹里:2023年11月、X(旧Twitter)のスペース上で、交通事故のプロフェッショナルとしてメディアにも多く出ていた人物(A氏)と、交通事故遺族の男性(B氏)が、私を名指しで誹謗中傷をしました。ほかにも、複数の犯罪被害者の方を挙げています。なかには当団体の松永拓也を「あのボケね」などと発言したものもありました。
私に関して言うと、A氏が「樹里ってバカ女が」と話題を始め、B氏が「とんでもない悪党ですよ」などと合いの手を入れています。さらにA氏は、まったく別の事件の被害者遺族の名前を出して「あのー多分セックスしてんじゃないかと私は思いますけどね」と、まったく事実に反することを不特定多数の聴衆が想定される場所で話していました。B氏は「もう小沢樹里、メディアに注目されてる交通事故遺族片っ端から食いまくってるんですね」などと同調しています。
――当該スペースの記録を取られている。
小沢樹里:もちろん、音源も保存しておりますし、書き起こしもおこなっております。私やほかのご遺族に対する誹謗中傷の事実に対して、2024年7月4日、被疑者2名が検察庁へ送致(送検)されました。私に対しての虚偽発言については名誉毀損罪が適用されました。
◆仲間からの裏切りに虚しみを覚えるも…
――これら一連の事件について、小沢さんがもっとも肩を落とされたのはどのような部分でしょうか。小沢樹里:特にB氏については、ともに活動をしていた時期もあります。当時、その方のほうが講演会をたくさんやられていて。「今度、◯◯で講演会をやるんだ」とお誘いいただいたこともありました。私は常に夫と一緒に活動をしているので、「いつも夫婦一緒なんだね」と言われたこともあります。
活動をしていくなかでともに同じ方向を向いてやってきた仲間だと思っていましたが、まったく根拠のない品性を疑われるような発言をしていたことに、「これまでの信頼は何だったのだろう」と虚しくなります。A氏については、社会的地位のある人の発言がどれほど影響力があるのか、考えるべきではなかったかと思いますね。
――必ずしも同じ傷を抱えていればわかり合えるわけでないところに、やりきれなさがありますね。今後の小沢さんの活動に悪い影響がないとよいですが。
小沢樹里:そうだと思います。社会を少しでも変えられたらと思って活動してきましたし、誰しもそうだったのだろうと思いますが、どこかでボタンをかけ違ってしまうことがあるのかもしれません。
とはいえ、大局において犯罪被害者同士は気持ちを共有しやすく、厳しい精神状態のなかでお互いに前を向いて進んでいく力になりやすいことは揺るぎません。2023年のことは、精神的にどん底まで落ちましたが、噂に踊らされることなく状況を冷静に判断してくれた方が大勢いることに感謝をしています。私はこれからも、犯罪被害者になってしまった人が事件以外の余計なことで苦しまない社会を作る一助を担えたらと考えています。
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窮地でこそ、その人の真価が問われる。極限の精神状態でなお、小沢さんが周囲への感謝を持ち続けられるのは、彼女の高潔さもあるが、志を同じくする仲間に恵まれたことも大きいだろう。失意のなかでなお、彼女はあるべき未来を描き続ける。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

