「もうこんなところ、1日もいたくない…」わずか1年半で退去したワケ
栄養バランスの考えられた豪華な三食の食事は、共有スペースのリビングダイニングで他の入居者と一緒に摂ることになっています。
入居間もないある日のこと、18:30に夕食のためにダイニングへ向かい、席に座ろうとすると、斜め後ろからふいに「そこは、〇〇さんの席なの。あなたは、あちらへどうぞ」と、隅っこの席をすすめられました。
「席が決まっているのかな」と思い、その場では「すみません……」と謝って移動したのですが、後で職員に聞けば特に決まってはいないとのこと。
「変わった人もいるもんだな」とそのときはやり過ごしたのですが、その後、次々と想定外のことが起こったのです。
外出自由なホームとはいえ、高齢になればホームで過ごす時間が長くなります。周りを見渡すと70代後半から80代の人が多いようでした。夫婦で入居している人もいます。
入居後ほどなくして、ユミコさんは閉鎖空間特有の「ドロドロした人間関係」を垣間見るようになったのです。常駐のスタッフも見て見ぬふりをしているようで、そのうちにユミコさんは共有スペースで他の入居者に会うのが憂鬱になってしまったのです。
そのため、気がつけば自室にこもることが多くなっていきました。せっかくの豪華な共有スペースを堪能することができなくなっていました。
すると、ユミコさんの「素っ気ない態度」が他の入居者の気に障ったのかもしれません。あるとき、古株の入居者がユミコさんの陰口を話していることを知ったのです。陰口の内容は本当にくだらないものでしたが、当然いい気持ちはしません。
「もうこんなところ、1日もいたくない……」
そんなことが続いた末、とうとう精神的に我慢の限界に達したユミコさんは、自主退去を決意したのです。入居からわずか1年半でした。
有料老人ホームの入居一時金には、一般的に「初期償却」と「均等償却」のルールがあり、短期間で退去すると償却負担が大きくなります。
ユミコさんの場合、2,000万円の入居一時金のうち返還されたのは1,400万円でした。
結局のところ、現在は賃貸マンションでの生活に逆戻りです。ただ、1年半の間に預金を600万円減らしてしまった心理的な負担もあり、以前の賃貸より安い賃貸マンションに暮らしています。将来への不安は増すばかりです。
失敗しない老人ホーム選び…「理想と現実のギャップ」を防ぐ3つのポイント
理想の「終の棲家」を見つけるためのポイントを考えてみましょう。
「ハード」ではなく「ソフト(人間関係・雰囲気)」が重要
最初に目に入るのは、高級な設備や共有スペースの豪華さなどのハード面ですが、生活する上での居心地の良さを決めるのは、「入居者層」や「スタッフの質」というソフト面です。
入居を検討する際には、曜日や時間帯を変えて複数回施設を訪問して、外側からだけではわからない雰囲気を体感することが鉄則です。入居者同士の会話の様子、スタッフがトラブルに介入しているかなども観察してください。
「体験入居」でコミュニティを肌で知る
資料や見学だけでは、外からでは見えづらい、閉鎖空間特有の「暗黙のルール」は見えません。
多くの施設では「体験入居」を行っています。実際に何泊か宿泊をしてみることもギャップを埋めるためには大切です。共有スペースでの入居者同士の雰囲気や食事も体験して、自分に合う施設なのかを確認してください。
契約内容(特に返還金制度)を確認する
契約面では、「入居一時金の返還方法」や「返還金の計算方法」など、万一、退去することになったときの条件をしっかり確認しておきましょう。
最近は、「入居一時金」を抑えた「月額利用料型」の施設も増えています。支払い方式を選択できるケースもありますので、資産防衛の観点からどちらの支払い方式が自分に合っているのか慎重に検討してください。
また、将来、介護が必要になった際の追加費用についても確認が必要です 。
