
東大卒・ゴールドマンサックス出身の投資家である小原正徳氏は、年収300万円から“億り人”になった人物の一人だ。彼は、まず「労働者脳」から脱し、給料以外でお金を稼ぐ方法を理解したうえで(1速ギア)、「投資家脳」をインストールする必要があると説く(2速ギア)。ただし、投資をするといっても、身近で見知った企業に投資していては資産は増えない。アクティビストとして知られる旧村上ファンドは、地方銀行や百貨店といった、市場で“終わった産業”と見なされる株をあえて大量に売買しているという――。本記事では、同氏の著書『世界の超富裕層がしている 「最初の1億円」の作り方』(KADOKAWA)より、旧村上ファンドの事例を通じて、「株式投資」で勝ち上がる方法を解説する。
〈年収300万円から“億り人”になるための「資産爆増5段ギア」〉
1速ギア:「汗」……給料以外で「最初の1円」を稼ぐ
2速ギア:「知恵」……経験とアイデアで手元の現金を増やす
3速ギア:「時間」……全自動で年間1000万円を生み続ける仕組みをつくる
4速ギア:「仲間」……“信用の総量”で1億円超を稼ぎ「富裕層」になる
5速ギア:「自由」……資本家となり、「超富裕層」へ
「株式投資」の本質
2速ギアの世界には、さらに広大で、さらにダイナミックな「価値のズレ」が眠る海が存在する。それが、株式市場だ。
「株式投資か……。なんだか難しそうだし、ギャンブルみたいで怖い」
そう思っただろうか? あなたが思い浮かべるのは、モニターに張り付いて、秒単位で株を売買するデイトレーダーの姿かもしれない。あるいは、意味不明なチャートの線とにらめっこする、丁半博打(ちょうはんばくち)のような世界かもしれない。だが、それらは株式投資の本質ではなく、一面に過ぎない。
2速ギアの価値変換として捉える株式投資とは、全く異なるゲームだ。それは、素晴らしい事業を展開している企業の「未来の価値」の一部を、市場という名の群衆がその本当の価値に気づく前に、安く買わせてもらう行為なのだ。
株を買うとは、単なる電子データを買うことではない。その企業の共同オーナーになる権利を買うことだ。
そして、あなたがこれから挑むのは、世間がまだ気づいていない、過小評価された企業の価値を見抜き、市場がその価値に追いつくのを、静かに待つという、極めて論理的で再現性の高い、知的な宝探しゲームなのである。
株価の「上下」ではない…注目すべき、ただ一点
このゲームで勝利するために、最初に破壊すべき労働者脳の思考パターンがある。それは、日々の株価の動きだけを見て、一喜一憂することだ。
多くの個人投資家は、株価チャートという名の心電図を見て、「上がった!」「下がった!」と感情を揺さぶられる。これは、企業の価値ではなく、市場に参加している無数の人々の「感情の波」でサーフィンをしようとする、極めて危険なギャンブルに過ぎない。波に乗れれば天国だが、一歩間違えれば、いとも簡単にのみ込まれてしまう。投資家脳を持つあなたは、そんな不確実なものには興味がないはずだ。
あなたが注目すべきは、ただ一点。その企業の「本来あるべき価値(本質的価値)」と、現在の「市場がつけている価格(株価)」との間に存在する、「価値のズレ」だけだ。あなたの仕事は、1万円の価値がある腕時計が、なぜか市場で、3000円で売られているのを見つけ出し、静かにそれを買うことなのだ。
皆が価値を知っている「良い会社」は、「良い株」ではない
ここで、極めて重要な原則を伝えよう。「良い会社」と「良い株」は、全く違うということだ。
例えば、誰もが知っている超有名企業。事業は素晴らしく、製品も一流だ。まさに「良い会社」だろう。しかし、その素晴らしさを市場の誰もが知っているため、株価がすでにその価値を織り込み済み、あるいはそれ以上に高騰しているなら、それは投資対象として「良い株」ではない。
逆に、事業は地味で、世間からの注目度は低い。しかし、着実に利益を上げ、財務も健全。なのに、何らかの理由で株価が不当に安く放置されている。これこそが、あなたが広大な海の中から探し出すべき「沈んだお宝(良い株)」なのだ。
日本市場では「良い株」を見極めやすい理由
そして、この「沈んだお宝」が、今の日本市場には、驚くほどたくさん眠っている。長年、「物言わぬ株主」が支配してきた日本市場は、今、構造的な転換点を迎えている。数十年にわたるコーポレートガバナンス改革の積み重ね。そして、2023年3月、東京証券取引所が打ち出した「PBR改善要請」という名の黒船。
PBR(株価純資産倍率)とは、企業の市場評価が、その解散価値に対してどの程度の水準にあるかを示す指標だ。そして、PBRが1倍を下回るということは、理論上、「その会社は、事業を続けるより、今すぐ解散して資産を株主に分配した方がマシだ」と、市場から宣告されているに等しい。東証は、このPBR1倍割れという「不名誉な烙印」を押された企業に対し、「なぜ自社の価値が低いのかを分析し、改善策を提示せよ」と、厳しく迫ったのだ。
このトップダウンの圧力が、眠れる日本企業を叩き起こし、バリュー投資家にとって、これまでにない興味深い投資環境を生み出している。もはや、投資家が自ら変革を強いるための面倒なプロセスを経る必要はない。東証という市場の番人が、すべての企業に対して資本効率の改善を公に要求しているからである。
これにより、我々個人投資家の主要なタスクは、この強力な外部圧力に最も的確に対応できる、あるいは対応せざるを得ない企業を見極めることにシフトした。
