人口680人の地域で、公営住宅への二拠点居住が実現した理由。長岡市山古志地域の住民自治とこれからの移住マッチング

人口680人の地域で、公営住宅への二拠点居住が実現した理由。長岡市山古志地域の住民自治とこれからの移住マッチング

全校生徒10人の学校を、地域みんなで支える

車を持たないりーまんさんの現在の移動手段は、地域の方から借りた原付バイクです。滞在3日目にして、バイクで走っているだけで「何時何分にあそこ走ってたでしょ」と目撃情報が竹内さんに寄せられるくらい、すでに山古志のコミュニティに認知されています。

私たちが食事をしたやまこし復興交流館おらたるには、地域のおばあちゃんたちが作った旬の野菜や、お惣菜が並んでいます。その他、特産のかぐらなんばんを使ったカレーや、うどんなどを食べることができます。(伊藤は、かぐらなんばんカレー600円と、かぐらなんばんのサイダー250円を頼みました。リーズナブル。) りーまんさんも、滞在中には500円で注文が可能な弁当を事前に頼んでおき、おらたるで買い物やリモートワークをすることもあるのだそう。

二拠点居住や関係人口の方々が、こうして定期的にお弁当やお惣菜を購入することは、地域の小さな飲食文化や拠点を維持することに直接繋がっていきます。数字上の人口は減っていても、昼間に養鯉(ようり・特産の錦鯉の養殖が盛ん)業者さんや畑仕事のために山古志に上がってくる「日中人口」が多いのも、山古志の活気の一因です。

過疎化や豪雪といった厳しい現実を前にしながらも、山古志の雰囲気が明るい理由について、竹内さんはこう説明します。

竹内さん:「崖っぷちだからこそ、『普段から一緒に楽しんで、一緒にチャレンジしてくれる仲間を一人でも二人でも増やしたい』という想いが根底にあるんです。山古志特有の人間関係で、時には『握手しながら殴り合いをしてる』みたいな本音のぶつかり合いもありますけど((笑))、みんな諦めていない。一度全村避難で外に出て、また戻ってきた経験がある地域だからこそ、よそ者を受け入れる土壌があるのかもしれません」

その一体感は、子どもの数が小中学生合わせて全校で10人にまで減った山古志小学校・中学校の維持にも現れています。

かつてりーまんさんが過ごした湯沢の中学時代は1学年120人ほどいましたが、現在は湯沢でも1学年25〜50人前後。そして山古志は全校で10人。保護者だけでは手が回らなくなったプール清掃や草刈り、運動会の運営を、今は地元の老人会や地域住民、地域で働く人が一体となって支えています。老人会のおじいちゃんたちが学校の畑を手入れするといった交流も日常的に行われています。

りーまんさんも関わるポッドキャスト「山古志ラジオ」。この配信を学校の先生方も聴いており、給食の時間に「地域のおじいちゃんたちが学校を支えてくれているんだよ」というストーリーが子どもたちに共有されています。地域全体がひとつの家族のように子どもを育て、文化を紡いでいるのが印象的です。

山古志小学校の近くには無料でアルパカ33頭(2026年6月時点)に会える「山古志アルパカ牧場」も。地域のおじいちゃん・おばあちゃんが孫のように可愛がっているとか。

これからの移住戦略に必要な「目利き」と「分配」の仕組み

私たち「きら星」は今、湯沢町や長岡市、見附市、三条市、弥彦村、加茂市など、新潟県内の複数の自治体で広域的な移住マッチングを行っています。実際に現場に立って感じるのは、地域によって住む人の気質も、求められる生活インフラも全く違うということです。そのため、長岡市のように広大な自治体において、一括りの「長岡市移住戦略」を立てることには難しさがあります。

例えば、使われなくなった教員住宅などを「目的外使用」として地域おこし協力隊や移住者の住居へ転換していく手法(きら星でも三条市下田エリアで実践しています)ひとつとっても、地域のキーマンと行政の柔軟な連携が不可欠です。

伊藤:「これから必要なのは、山古志の竹内さんのような『各支所エリアのキーマン』と密に連携し、セントラル(中央窓口)が地域のリアルな情報を集約することです。そして移住希望者が来たら、『この人の気質ややりたいことなら、(長岡市)小国よりも山古志が合う』『この人は加茂市の観光PRの仕事が向いている』と、プロの目で【目利き】をして分配・マッチングしていく。それこそが、地域にとっても移住者にとっても、一番幸せでスピード感のある関係性を生むはずです」

制度の壁を越えた山古志の住民自治と、そこに飛び込んだりーまんさんのようなプレイヤーの存在は、これからの地域づくりの大きなヒントになります。

不便さをひとつの「ギャップ」として楽しみながら、地域と丁寧に関わる人々が集まる山古志。いま・ここにいるがすぐにわかって届けられる冷えたクラフトビールの引っ越し祝い。 笑顔で原付バイクにまたがるりーまんさんの姿を見ながら、数字だけでは測れないローカルの持つ可能性と、これからの移住マッチングのあるべき姿を再確認しました。

配信元: Nativ.media

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