ただ、こうした特典の存在に気づかないまま、長年にわたって「知らない間に損をしていた」というケースもあるらしい。
今回は、10年来の友人グループの中で、ずっと幹事を任せていた一人の男の「正体」に気づいた44歳のエピソードを紹介する。

◆長年にわたって幹事に任せきりだった
田中さん(仮名・44歳)には、大学時代から付き合いの長い友人グループがいる。メンバーは5人、年に3〜4回ほど集まっては近況を報告し合う、緩やかだが大事な集まりなのだそうだ。「幹事はいつも松本(仮名)でした。店探しが上手いし、予約も会計もスムーズにやってくれるので、自然と任せきりになっていたんです」
会計は、いつも松本さんがクレジットカードでまとめて立て替え、その場で現金を回収するスタイル。田中さんたちは特に疑問も持たず、毎回「ありがとう、助かるわ」と言いながら、財布から現金を渡していた。
きっかけは、田中さんが別の集まりで聞いた、なにげない一言だった。
「会社の同僚と飲みに行ったとき、『この店、幹事1人無料なんだよね』って言われて。へえ、そんなのあるんだ、くらいの感覚でした」
ふと、いつも松本さんが予約している居酒屋チェーンの名前を思い出した田中さんは、帰宅後に何気なく検索してみた。
「出てきたんですよ、同じ『幹事無料』のプランが。びっくりして、思わずスクロールする手が止まりました」
過去10年、松本さんが一度も自分の飲食代を払っていなかった可能性に、田中さんはこのとき初めて気づいたのだ。
◆軽い冗談からその場の空気が凍り付く
さらに記憶をたどると、もう一つ引っかかることがあった。会計はいつも松本さんのクレジットカード払いだったことだ。「1回の飲み会で、だいたい2万〜2.5万円くらいの会計だったと思います。それを年4回、10年間。ポイント還元のことを考えると、結構な金額になるんじゃないかって、ふと感じてしまって」
田中さんは半分面白がりながら、半分は複雑な気持ちで電卓を叩いた。
「金額そのものより、誰にも言わずにずっとそうしてたんだな、というのが、なんとなく引っかかったんですよね」
しばらく悩んだ末、田中さんは次の飲み会の前に、グループLINEでやんわりと切り出してみたんだそう。
「あの店、幹事無料プランあるみたいだね(笑)ポイントも貯まってそう?」
なんとなく発信した、軽い冗談のつもりだった。
しかし、返ってきた松本さんの言葉に、空気が一変した。
松本さんからの返信は、「幹事の手間賃みたいなもんでしょ。それくらい別にいいじゃん、細かいこと言うなよ」だった。
そして松本さんのLINEに既読はついているのに、他のメンバーからの返信はしばらくなかった。
「誰も松本を責めたわけじゃないし、たぶん本人もそんなに深刻に捉えていなかったと思うんです。でも、あの空気はちょっと忘れられないですね」と田中さんは語る。

