「共感できなくても、理解する。それが無理でも知ることなら」(上阪)
家庭内暴力やいじめ、度を超えたイタズラから大人の手に負えず疎まれる少年・海斗は、暴力的な過去を持つ男・西と出会い、彼が運営する更生施設「みらいの里」へと入所する。しかしそこでもトラブルを起こし脱走。その最中に傷害事件で逮捕されてしまう。
心身ともに激しくぶつかり合う西と海斗、その周辺の人々を通して“人は変われるのか”という普遍的なテーマに迫る今作。まずお二人は、自身の役柄についてどのようにアプローチしたのか。

上阪隼人(以下、上阪):
決定をいただいた時、ただただ嬉しかったのですが、澤海斗という人物像について考えるうちに、これまで演じた役にはない得体の知れないヤバさを感じ、同時に“難しそうだな”とも感じて。正直に言って僕自身、海斗には共感できるところがない。だからこそ海斗のことをできる限り想像して挑まなきゃと思いました。
吉田(恵輔)監督からは衣装合わせの段階で「海斗はお金持ちじゃないスネ夫だ」って言われました(笑)。

一ノ瀬ワタル(以下、一ノ瀬):
スネ夫かぁ(笑)。
上阪:
だらしなくてお金もなくて、社会的に見ても弱い立場にいる。自分が弱いから、ジャイアンのような先輩たちと一緒につるんでばかりいて、先輩の後ろからうるさくヤジを飛ばす。虎の威を借る狐そのものですね。
一ノ瀬:
でも確かにあの不良たちの中で一番、タチが悪かった(笑)。一緒にいる先輩たちも悪そうに見えるけど、西健吾からすると「あの子が一番ヤバイな」っていう。
上阪:
監督から「口の中で舌をレロレロ動かしていて」とも言われました。目線は明後日の方向をぼーっと眺めていて、口は半開き。一見、地味で真面目そうに見えるのに、些細なことをきっかけに暴れ出すと歯止めが効かない。見た目では分からない悪さというか、監督が一緒に考えてくれたから演じられたけど、共感まではいきませんでした。

一ノ瀬:
それでいうと西健吾が取り組む活動や決意は理解できますし、「人は変われる」という姿勢にも100%共感していました。自分は過去に格闘技をやっていて、その稽古中に空手や柔道など、武道や柔術を通してヤンチャだった子供たちが更生していく姿を見てきました。だから自分でも人は変われると確信している。
一ノ瀬:
その上で監督からクランクイン前に言われたのが「今回、一ノ瀬さん演じる西健吾という役には登場人物みんなを全部、受け止めてほしい」ということ。だからどのシーンでもひたすら受け身に徹したつもりなんですが、この作品には「変われない人」も出てくるんですよね。
上阪:
そうですね、頑張っても環境的に変われないこともあるし、悪循環から抜け出すことって簡単じゃない。だから海斗のような人を見て「こんな奴らとは一緒に生活できない!」と思う人がいても当然だと思います。でもそんな存在がいるということを知ってもらえるだけでも意味があるというか。
一ノ瀬:
なんか上阪くんの話を聞いて、やはりただの不良役ではダメだったなと思いました。自分もこれまでたくさん不良の役を演じて来ましたけど、ステレオタイプの不良では成立しませんから、この作品は。上阪くん演じる海斗がいたからこそ、この作品が成り立っていると感じました。
上阪:
あれ、ありがとうございます(笑)。
「みらいの里」の子供たちと同じくらい愛情を注ぐ存在

劇中では更生施設「みらいの里」で出会い、一時的にだが生活を共にする西と海斗。では現在、東京で暮らす一ノ瀬さんと上阪さんにとっての“居場所”とは、どこなのだろう。
一ノ瀬:
自分は今、一緒に生活している8羽のウサギですね。
上阪:
そうだ、たくさんのウサギと一緒に暮らしているんですよね!
一ノ瀬:
そうそう、みんな家族なんですが本当に可愛くて。毎日「なんて可愛いんだ、お前たち」と話しかけながら癒されています。それこそ作品の中で更生施設「みらいの里」で暮らす子供たちに愛情を注ぐ西と同じくらい、自分もウサギたちに常日頃から愛情を注いでいます。家であり、ウサギたちが今の自分の“居場所”です。
