
◆見る分には美しい「ヘディング」が将来の脳に影響する?

スコットランドの元プロサッカー選手約7600人を対象に、年齢や社会的背景をそろえた一般男性を、死因や病気のリスクを比較した有名な研究があります。その結果、元プロサッカー選手は、心筋梗塞のような血管の病気で亡くなるリスクが低く、肺がんでの死亡リスクも約50%低いという良い結果が出ています。実際、他の研究でもサッカーを行なう人は、寿命が約4.5年長いという研究もあります。
ところが一方で、アルツハイマー病やパーキンソン病といった「頭の神経の病気」で死亡するリスクは約3.5倍。さらに、アルツハイマー病に限ると約5倍、認知症関連薬を処方される割合も約5倍でした。 勿論、これだけで「ヘディングが認知症の原因」と断定するのは早計です。プロ選手の生活習慣やケガ歴、運動量など色々な要因が絡んできます。
ただヘディングの機会が少ないゴールキーパーでは認知症関連薬の処方が明確に低かった結果もあります。それを考えると、「頭部への反復刺激」の蓄積が将来の脳や神経に影響を与える可能性は見逃せません。
◆頭部への衝撃が「うつ病」と関係する? アメフトの教訓
頭部への衝撃という観点では、アメリカンフットボールの研究も有名です。元プロアメフト選手約2500人を調べた研究では、現役時代に脳震盪を3回以上経験した選手は、脳震盪の経験がない選手に比べて、引退後に「うつ病」と診断されるリスクが約3倍に高くなっていました。
さらに、ボストン大学などの研究チームが、亡くなった元アメフト選手の脳を調べた研究では、111人の元NFL(National Football League)選手のうち、実に110人(99%)の脳から「慢性外傷性脳症」という、繰り返す頭部への衝撃が原因で生じる脳の変化が見つかりました。脳への反復的な衝撃は、「記憶力」だけではなく、「気分」や「性格の変化」にも影響する可能性があるわけです。

