◆見ている側も安全ではない? 自国の試合で心臓病リスクが上昇!

発症のピークは「試合開始から2時間以内」に集中していました。試合が進むにつれての緊張感、決定的ピンチやチャンスでの冷や汗や極度の興奮。これらによって交感神経が繰り返し刺激され、血圧や脈拍数が上昇し、血管の働きにも影響した可能性があります。
実際、2010年の南アフリカ・ワールドカップの決勝を観戦したスペイン人50人を調べた研究では、観戦中にストレスホルモンであるコルチゾールが通常よりも約50%も高くなっていました。つまり「テレビの前で叫んでいるだけ」でも、体の中ではかなり激しい試合が起きているのかもしれません。
◆「日本代表には優勝してほしい」医学的理由とは
一方で、サッカー観戦は心臓に悪い話ばかりではありません。実は、私たちをストレスから解放し、心臓を守ってくれるかもしれない究極の特効薬が存在します。それが「自国の優勝」です。
フランスが1998年ワールドカップで優勝した日の死亡統計を調べた研究では、男性の心筋梗塞での死亡率が、前後5日間の平均約33件に対して、決勝当日は23件と約3割少なくなっていました。
正直、明確な理由ははっきりしていないのですが、国全体の高揚感、勝利への期待や一体感、そして歓喜によるストレス軽減が合わさって、心臓に良い方向へ働いた可能性があります。
現実的には、多くの健康な人がワールドカップ観戦を恐れる必要はないでしょう。ただ高血圧症がある人や、心筋梗塞などの心臓病の持病がある人、睡眠不足が続いている人は少しだけ注意した方がいいかも。またハーフタイム中に深呼吸をする、観戦中もこまめな水分補給をするなどの工夫は意外と大事です。
サッカーは、人の体も心も動かします。選手のヘディングには将来的な脳のリスクがあり、観客の熱狂には心臓のリスクが潜んでいる。ただ、国が一つになって歓喜する時間には、医学だけでは測りきれない健康効果もあるのかもしれません。だからこそ日本代表には、今年のワールドカップは医学的にもぜひ優勝してもらいたいものです。
<文/岡本宗史>
参考資料
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van der Meij L, et al. Testosterone and cortisol release among Spanish soccer fans watching the 2010 World Cup final. PLoS One. 2012;7(4):e34814.
【岡本宗史】
東京大学大学院医学系研究科を修了後、埼玉県のクリニックにて実臨床に従事。「健康・エイジングケア」に関する知見を、医学的視点から紐解き、メディアやSNSを通じて多角的に発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」評論家 等。 Instagram:@soshi_okamoto

