
介護の仕事を始める人の理由はさまざまです。家族の介護がきっかけという人もいれば、自宅近くの介護施設で求人が出ていたから、という人もいます。
では、芸歴20年の俳優が「週2日だけ」介護の現場に立ち続けるのはなぜでしょう。俳優・モデルとして活動する坂田梨香子さんに話を聞きました。
話を聞いた人

坂田 梨香子
1993年生まれ、佐賀県出身。2006年、雑誌『ラブベリー』(徳間書店)のオーディションでグランプリを受賞しモデルデビュー。その後、『Seventeen』(集英社)や『CanCam』(小学館)の専属モデルを務め、俳優としても活躍中。『仮面ライダーフォーゼ』(テレビ朝日・風城美羽役)などに出演。また、2024年佐賀市観光PRアンバサダー「アンバサガー」リーダーに就任。現在も芸能活動を続けながら、週2回程度デイサービスで勤務している。
芸歴20年の俳優がなぜ介護職に?

──坂田さんが介護の仕事を始めたきっかけを教えてください。
坂田さん:実はもともと看護師になりたいと思っていたんです。母が看護師なのですが、大変な仕事のはずなのに、仕事の話をするときはいつも楽しそうで。子どものころからその姿を見て育ったので、自然と医療職への憧れが芽生えていました。
看護師への憧れは持ちながらも、12歳でモデルの仕事を始めて、中学卒業後に上京してからは、自然と芸能の道一本に集中するようになりました。
──それがどう介護につながったんですか?
コロナ禍に時間ができて、夜間の看護師専門学校に通おうかと考えたことがあったんです。各学校の資料まで取り寄せたのですが、夜間コースがある学校が少し遠くて本職との兼ね合いから現実的に難しいことがわかりました。それでも、なぜか諦めはつきませんでした。
そこで一度立ち止まって、なぜ看護師になりたいのかを突き詰めて考えたんです。すると行き着いたのが、「困っている人を助けたい」という思いでした。目の前に困っている人がいても「逆に迷惑かも」と声かけすらためらってしまう場面があるじゃないですか。介護職なら、助けが必要な人に堂々と手を差し伸べられる。それに介護職員初任者研修*なら芸能の仕事と並行しながら短期間で取得できますし、やらない理由がないと思いました。
そんなタイミングで、友人から「初任者研修を取ろうと思う」と聞いて、「じゃあ私も!」とジョブメドレースクールに申し込んだんです。
*介護職員初任者研修…介護職の入門となる公的資格。未経験でも受講でき、介護の基礎的な知識を習得できる
手を差し伸べることだけが優しさじゃない
──介護現場ではどんな仕事をしているんですか?
今は週に2日程度、9時から13時までデイサービスに勤めています。お迎えから始まって入浴介助、体操、食事の見守り、トイレ介助、口腔ケア、日によっては調理まで。4時間ずっと体と頭を動かし続けている感じで、かなり忙しいですね。
──実際に働いてみてどう感じましたか?
想像とぜんぜん違うことがあって驚きました。例えば、ボールを使った体操をしたあと、利用者さんのボールを一つひとつ回収に回ったんです。でもベテランの先輩はボールを投げ返してもらい、そこまでをリハビリにしていて「手を差し伸べることだけが優しさじゃない」と気づかされました。
──困っている人をほっとけない性格だともどかしいのでは?
そうですね(笑)。でも、なんでもやってしまうと、その人の力を弱らせてしまう、逆に任せすぎると転倒リスクや危険につながる場合もあります。
マニュアルどおりにはいかないことも多いんです。声かけ一つ取っても、ある人には伝わる言葉でも、別の人には届かないことがよくあるんですよね。その人の性格やコンディションを見ながら毎回考えていくのが大変でもあるし、おもしろくもあります。

