芸能は「間接的」、介護は「目を見て、手に触れて」

──芸能と介護の仕事で違うと感じることは何ですか?
反応を直に感じられるか、ですね。芸能の仕事は「伝わったらいいな」という希望ベースで続けるしかなくて、「伝わった」と断言できる瞬間が実は少ないんです。NHKの大河ドラマに出たとき、まだ祖父が生きていたので電話で伝えたらとても喜んでくれたんですが、できれば声だけじゃなくてその顔も見たかったんです。
でも介護は、目を見て、手に触れて、直接的に人と関われます。仕事中、自分が出演しているCMが流れたときに、目の前で利用者さんが「坂田さん出てるよ!」って声をあげて喜んでくれたんです。私が届けられなかったもの、願っていたものを、利用者さんに重ねているのかもしれないですね。
──それはうれしい瞬間ですね。そういったところが介護の仕事のやりがいにつながっているんでしょうか?
そうですね。私が関わることで、目の前で変化が起きるのもやりがいのひとつです。
コミュニケーションの目的はその人の心を知ることなので、気持ちを動かすことが大事だと思っていて。最悪、嫌われてもいいので、利用者さんの心に触れて、少しでも感化してもらえればそれでいいんです。芸能でも「何か感じてくれたらいいな」という気持ちでずっとやってきたので、根っこは同じなのかもしれませんね。
芸能人と介護職員の絶妙なバランス
──ふたつの仕事を並行するのは大変ではないですか?
もちろん大変なこともあります。でも、介護の仕事から帰ってくると、夫から「疲れたって言う割に、すごく楽しそう。発言と表情が全然一致してない」ってよく言われます(笑)。もしかしたら母も今の私と同じ気持ちで働いていたのかもなって、最近思います。
そう考えると、介護の仕事が自分に合っているのかもしれません。芸能の仕事だけだと浮き沈みが激しすぎて、エネルギーが持たなくなる瞬間があるんです。でも介護には「こういう日が続く」という地続きな感覚があって、それが本業とのバランスを取るのに良くて、ホッとする気持ちがあります。
──芸能と介護、ちょうどいい塩梅なんですね。
ええ。それに、30代で新人になれる環境って少ないじゃないですか。ゼロから始める感覚が久しぶりで、それが芸能の仕事へのモチベーションにもなっているし。やってみるもんだなあって思います。
芸能で「辞めたほうがいいんじゃないか」と思う瞬間があるんです。でも、現場スタッフから「坂田さんの出演作品を見て、映像の仕事を始めたんです!」と声をかけてもらえるなど、思いが届いていたんだと感じることもあって。そのたびに「まだ辞めてやらないぞ」って思えるんです。私、諦めが悪いんです(笑)。

