◆普段通りを装おうとするが、ぎこちなく
週明け、出社した佐藤さんを待っていたのは、想像以上の気まずさだった。「エレベーターで木村さんと2人きりになった瞬間、心臓がバクバクしました。向こうも明らかに表情が硬くて」
お互い「お疲れ様です」とは言うものの、目は合わせない。エレベーターの中の数十秒が、やけに長く感じられたそうだ。
「変に意識してることがバレる方が、よっぽど気まずいじゃないですか。だから、普段通りを装うのに必死でした」
しかし、普段通りを装おうとすればするほど、逆にぎこちなくなる。ランチで他部署と合同になった際、たまたま木村さんと同じテーブルになったときは、会話の内容がまったく頭に入ってこなかった。
「周りが普通に喋ってるのに、自分だけ変な汗かいてました(笑)。木村さんも、心なしか箸の動きがぎこちなかった気がします」
◆周囲が怪しい空気を察知しだす
徐々に違和感が社内で波及していく。「同じ部署の後輩から、『最近、佐藤さんと木村さん、やけによそよそしくないですか?』って言われたんです。心臓が止まるかと思いました」
男女2人がやけに気を遣い合っている。その空気は、周囲には別の意味で映っていたらしい。
「『もしかして、お二人何かあるんですか?』なんて、半分冗談っぽく聞かれたこともあって。違う意味で焦りました(笑)。実際にラブホで会ったなんて、口が裂けても言えないし」
もちろん、何があったかを話せるはずもない。佐藤さんは「気のせいじゃない?」と苦笑いでごまかすしかなかった。
「お互い気を遣いすぎて、逆に変な空気を作っちゃってたんでしょうね。何も知らない周りからすれば、ただ変な空気になっている2人。それも、なんとなく怪しく見えたみたいです」

