「給与明細を二度見しましたよ…」転職で年収200万円アップに成功した53歳男性。“月14万円手取りが増える”と妻と喜ぶも…翌々年、“手取りが月3万円減った”まさかの理由【社労士FPが解説】

「給与明細を二度見しましたよ…」転職で年収200万円アップに成功した53歳男性。“月14万円手取りが増える”と妻と喜ぶも…翌々年、“手取りが月3万円減った”まさかの理由【社労士FPが解説】

入社翌々年の6月に激震…「手取り月3万円減」の落とし穴

しかし、入社して翌々年の6月、給与明細を開いたAさんは思わず二度見しました。

「手取りが、月3万円も減っている……!?」

なぜ、固定給であるはずなのに、これほど手取りが急減してしまったのでしょうか。そこには、税金の仕組みが生んだ「家族構成の変化」と「タイムラグ」によるダブルパンチが隠されていました。

1.子どもの独立による「扶養控除の喪失」

転職した最初の年末、子どもの年齢は22歳でした。19歳以上23歳未満の子どもは「特定扶養親族」に該当するため、控除額が優遇されています。Aさんも所得税で63万円、住民税で45万円の控除を受けられていたため、税負担が低く抑えられていたのです。しかし、無事に大学を卒業して就職が決まったことで、税優遇がなくなってしまいました。

Aさんは税控除の優遇がなくなるから、少し手取りが減るかもしれないとは思っていました。しかし、月3万円も減るとは思っていなかったので、ショックを受けたのです。大幅に手取りが減ったのが次の理由です。

2.住民税の「タイムラグ」

住民税は「前年の1月〜12月の所得」をベースに計算され、翌年の6月から新しい税額の徴収が始まる仕組みになっています。

Aさんが転職したのは12月だったため、入社後の最初の年末は前職での年末調整でした。転職した「翌年」の6月から支払っていた住民税は、まだ前職の低い収入(年収700万円時代)をベースに計算されたもの。つまり転職直後の1年間は、「年収900万円の給与」を得ながら、「年収700万円の住民税」しか引かれていない期間だったのです。ところが、入社して「翌々年」の6月になり、ついに前年の丸1年分の大幅アップした年収900万円をベースにした住民税が課されるようになりました。

前年より収入が200万円上がったことによる増税に加え、子どもの扶養控除が消えた負担が同時にのしかかり、結果として手取りが月3万円も減少するという事態に直面してしまったのです。

収入アップの際は要注意、時間差でやってくる手取りの変化

Aさんのように、転職して収入が大きく上がったとしても、その影響が住民税として給与明細に本格的に反映されるまでには、タイムラグがあります。そのため、忘れたころになって、翌々年の6月にショックを受けることは少なくありません。

学校を卒業して4月に新入社員となった人が、翌年の6月から初めて住民税の天引きが始まって手取りが減る話は知られていますが、すでに働いている中高年であっても原理はまったく同じです。

「収入が増えたから」と気が大きくなって使いすぎてしまうのは禁物です。家族構成の変化や前年の所得によって、たとえ額面の固定給が変わらなくても、翌年・翌々年の手取り額が同じままであるとは限りません。ライフプランの変化と税金の時間差を視野に入れ、手元のお金を管理していきましょう。

〈本記事における試算の前提条件〉

※前職(月収55万円/標準報酬月額56万円、扶養2人)および現職(月収75万円/標準報酬月額75万円、扶養2人)の手取り額は、2026年度の「協会けんぽ(東京都)」の保険料額表、雇用保険料率、所得税の源泉徴収税額表、および東京都内区の住民税シミュレーションをもとに、端数等を調整の上、筆者が作成したものです。

※実際の2026年度の税額シミュレーション(年収900万円への増収+扶養1人への減少)では、毎月の手取り差額は約2万4,000円の減少となりますが、本稿ではケーススタディとしての分かりやすさを重視し、端数等の調整を含めて「月約3万円の減少」として試算・表記しています。

〈参考〉

独立行政法人労働政策研究・研修機構:初任給

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0404.html

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

共同代表

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