◆「取り立てるのか」とまるで被害者のような口ぶり
半年が過ぎた頃、田中さんはさすがに「そろそろ返済のめどを教えてほしい」とLINEを送った。しばらく既読のまま返信はなく、数日後に届いたのはこんな言葉だった。「そんなに取り立てるのか。お前らしくないな」
田中さんはスマホを持ったまま、しばらく固まったという。
「『取り立て』って言葉が出てくるとは予想していなかったです。お願いされて貸しただけなのに、なんで自分が悪者みたいになってるんだろうって」
◆共通の友人たちも被害を受けていた
モヤモヤを抱えたまま、田中さんは大学時代の共通の友人・山田さん(仮名)に何気なく相談した。すると、思いがけない言葉が返ってきた。「実は俺も、ちょっとだけ貸してるんだよね……」
さらに話を進めると、もう一人の仲間・鈴木さん(仮名)にも同様の借金があることが判明する。
「3人で『え、お前も?』『俺も』みたいな会話になって。笑えばいいのか、ドン引きすればいいのか、よくわからない空気になりました」
その後、グループLINEで誰からともなく松本さんに事情を聞こうとする流れになった。しかし、返信は曖昧、その内返信もポツポツと減っていき、ある日、松本さんは静かにグループから姿を消した。
「責めるつもりはなかったんです。ただ、状況を整理したかっただけで。でも、向こうにとっては都合が悪かったんでしょうね」
それから連絡は完全に途絶えた。電話も出ない、LINEも既読がつかない。
「もう関わることもないんだろうなと、半分諦めの境地にありました」
転機が訪れたのは、それから半年後のことだった。山田さんから田中さんに、1枚のスクリーンショットが送られてきたという。
見ると、松本さんのインスタグラムが、久しぶりに更新されていた。
南国らしいビーチを背景に、満面の笑みでピースサインをする松本さんの写真。写真を見た瞬間、田中さんは言葉を失った。
「一瞬、誰の投稿か認識できなかったんです。こっちは半年間連絡もつかなかったので、あんなに楽しそうにしている姿と松本が重ならなくて」
しばらく画面を見つめたまま固まっていたが、キャプションに目をやった瞬間、今度は別の感情がこみ上げてきたという。
「人生リセット! 新しい自分でスタートです」
「それを読んだ瞬間、なんか力が抜けちゃって。笑うしかなかったですね。もう、怒りとかを通り越して。清々しいくらい『あいつらしいな』って」

