非上場株式は会社規模や株主の立場などを踏まえて評価額を決める
吉田課長「非上場株式は、あまりなじみがないのですが」
たとえば、吉田さんがサラリーマンを辞めて会社を設立し、起業した場合の会社の株式がこれに当たります(前掲1.(3))。このような会社は株式市場に上場していないため、「非上場株式」と呼ばれます。
非上場株式は、一般の投資家が設立時に出資したり、設立後に売買したりすることがほとんどありません。つまり、上場株式のように日々の売買実績がほとんどないのが一般的です。
吉田課長「非上場株式の評価は複雑だと聞きました。上場株式となにが違うんですか?」
そのとおりです。まず、非上場株式の評価は次の考え方に基づいて行われます(下記3)。
3.非上場株式の評価の考え方
非上場株式は、上場株式のように市場で売買されないため、次の(1)〜(4)の考え方を踏まえて評価する。
(1)会社を大会社、中会社、小会社に区分する。
(2)会社区分ごとに異なる評価方法を採用する。
(3)この評価方法は、オーナー株主など少数株主以外の株主に適用する。
(4)少数株主については、非上場株式を社債や投資信託などに近い金融商品とみなし、配当利回りをもとに評価額を算定する。
上場株式は市場価格が存在するため、大株主・少数株主を問わず、市場価格をそのまま評価に用いることができます。一方、非上場株式には市場価格がありません。そのため、次のような前提に基づいて評価方法が設計されています。
(1)経営権を持っている株主と持っていない株主では、同じ株式でも価値が異なる。
(2)上場会社に近い規模の会社と、個人事業に近い小規模の会社を同じ方法で評価するのは適当でない。
(3)その会社の規模を判断する際には、たとえば卸売業とサービス業など、業種によって基準を変えたほうが実態を正確に反映できる。
このように、非上場株式は会社の規模や株主の立場などを踏まえて評価額を決める仕組みになっているため、上場株式に比べて複雑な規定になっているのです。
オーナー株主の株式の評価方法
吉田課長「では、オーナー株主の株式の評価方法を教えてください」
オーナー株主とは、議決権割合の30%以上または50%超(下記5.(2)①イ、ロ)を保有して、会社の経営に影響力を持つ株主のことです。創業者やその家族など、会社の意思決定に関わる立場の人が該当します。一方、従業員や外部の出資者など、経営に関与しない株主は一般株主(少数株主)と呼ばれます。
オーナー株主の評価は、少数株主とは異なる扱いになります。 ただし、評価の出発点となる会社区分(大会社・中会社・小会社)は、従業員数、総資産価額(帳簿価額)、売上高、業種に応じて定められています。
まず、非上場株式の評価は、会社を大会社・中会社・小会社に区分し、それぞれに応じた方法で行います(下記4)。
4.非上場株式の評価の原則(財産評価通達179)
大会社、中会社、小会社の区分に応じ、(1)~(3)の定めにより評価する。(いずれも①または②いずれかを採用)。
(1)大会社
①類似業種比準価額
②1株当たりの相続税評価額による純資産価額
(2)中会社
①組合せ方式(次の算式で計算した金額)
類似業種比準価額×L(0.90、0.75、0.60)+1株当たりの相続税評価額による純資産価額×(1-L)
②1株当たりの相続税評価額による純資産価額
(3)小会社
①1株当たりの相続税評価額による純資産価額
②組合せ方式(次の算式で計算した金額)
類似業種比準価額×0.50(L)+1株当たりの相続税評価額による純資産価額×0.50(1-L)
大会社は、「①類似業種比準価額」か、「②純資産価額」のどちらかで評価します。
その類似業種比準価額は、業種が近い上場会社の株価に一定の補正(割引率)を掛けて求めます。一方、純資産価額は、個人事業を営んでいる人が持っている事業用の資産、負債とのバランスを考慮した評価方法です。会社の資産の相続税評価額から負債と法人税額等を差し引き、その金額を発行済株式数で割って算定します。
実務では、類似業種比準価額のほうが低くなるケースが多いです。
中会社は、①類似業種比準価額と純資産価額を組み合わせた金額と、②純資産価額のいずれかを採用します。
中会社の評価では、類似業種比準価額と純資産価額をどの程度の割合で組み合わせるかを示す「L」という係数を使います。Lは会社の規模(総資産や売上高)と業種によって「0.90」「0.75」「0.60」のいずれかが適用され、規模が大きいほど類似業種比準価額の比重が高くなります。つまり、規模が大きい中会社ほど「上場会社に近い評価」に寄せる仕組みです。
吉田課長「小会社も中会社に似ていますね」
小会社の場合は、中会社と似ています。ただし、組み合わせ方式による場合、Lの割合が「0.50」と低く設定されている点が異なります(上記4.(3))。
