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高校を中退、極貧生活から21歳で独立した女性溶接工。「本当に嫌いだった」父を従業員として雇ったワケ

高校を中退、極貧生活から21歳で独立した女性溶接工。「本当に嫌いだった」父を従業員として雇ったワケ

◆21歳で独立して元配管工の父を雇う

出張
出張は数日~数ヶ月に及ぶこともあるそうだ。滞在先のホテルからの配信も好評
――なぜ独立しようと思ったのですか。

現場に出るようになってからは、仕事が本当に楽しかったですし、やりがいも感じていました。ただその一方で、「私はこの先どこまでいけるんだろう」「これ以上上に行くには何が足りないんだろう」と深く考えるようになったんです。

仕事は順調だったはずなのに、自分の将来や人生について悩むことが増えてしまって……。精神的にかなり落ち込んでしまい、深く病んでしまった時期もありました。そんな中で、いろいろな職人さんと出会う機会が増えました。その中でも特に印象に残っているのが、私と年齢の近い人たちが、数人で会社を経営しているグループです。同世代なのに、自分たちで仕事を取ってきて、会社を運営して、多くの責任を背負っていました。その姿を見てかっこいいと思いましたし、「私ももっと挑戦したい」と強く思うようになりました。そして、5年間働いた会社を辞めて、21歳で個人事業主になりました。

――どのような事業をされていますか。

プラントやボイラーの溶接・配管工事を手がけていて、取引先から「こういう現場があるから応援にきてほしい」と仕事を振られたら、下請けとして現場に入っていきます。今は2人の従業員を雇っていて、ひとりは父です。彼はもともと配管をやっていたので、今配管を担当してもらっています。

仕事中
――お父さんを従業員として雇っているのですか?

昔から「親を助けたい」と思っていたんです。私は、両親がまともに働いている姿を見たことがありません。母はずっと荒れていたし、精神的な病気を患っています。車に轢かれたのもあって働けず、他で雇ってもらうのは難しい。

父も仕事をしていなかったり、荒れた生活をしている……と、私の目にはうつっていました。その後ちゃんと仕事をしても、人が良すぎてお金を払ってもらえない(笑)。それなのに、すぐに人を信じちゃうんです。それだったら、私がちゃんとお金を払う。そう思って、父をうちの会社に呼びました。

――家族との関係に変化はありましたか。

昔は親のことが本当に嫌いで、縁を切っていた時期もありました。でも、誰かのせいにしたり文句を言ったりするんじゃなくて、「まずは自分が変わってみよう」と思ったんです。会社を一生懸命やっていくうちに、親もいい方向に変わっていってくれました。

◆妊娠7ヶ月、次の挑戦は「人の育成」

幼少期
幼少期の姉との写真。姉はMIOさんとは違う仕事をしているそうだ
――SNSで発信をされている理由を教えてください。

もっとたくさんの人の未来を照らし、輝ける場所を作りたいと思いました。若い子が全然いない現場なので、溶接という仕事があることを知ってほしかったし、現場は一番若くて30歳、あとは40代、50代の世界なので……。

そして実は今、彼氏との子どもを妊娠していて、7ヶ月に入ったところです。妊娠をきっかけに、働き方を少し変えていこう、妊娠中の私にもできるものと思いInstagramを始めました。

MIO
――お腹が出てくると、現場に出るのが難しそうですね。

そうですね、自分ではまだ全然働けると思っているんですけどね(笑)。ただ、自分だけの問題じゃないので、周りに心配をかけたり、迷惑をかけたりするのは違うと思っています。だからこそ、これを機に、現場以外の仕事の割合も増やしていきたいです。会社としても次のステージに進むタイミングなのかなと思っています。

ただ、子どもが生まれても、母や協力者に見てもらいながら、経営者として仕事の幅を広げていくつもりです。

――仕事はどんな変化をしていきそうですか。

去年は未経験の従業員を育てる機会が多くありました。最初は本当に何も分からない状態だったんですが、今では一人で現場に行けるまで成長してくれています。その中で、人に教える難しさも感じました。人を育てることに関しては私自身も初心者なので、従業員や周りで協力してくださった方々のおかげで、私自身もたくさん学ばせてもらっています。

たとえば、自分では当たり前にやっていることでも、相手にとっては当たり前じゃない。技術はもちろん大切ですが、それ以上にコミュニケーションや信頼関係が大事なんだと気づきました。

今後は現場での仕事を続けながら、人材育成や会社づくりにもさらに力を入れていきたいと思っています。

――業界にもいい影響を与えそうですね。

建設業は将来に不安を感じる人も少なくありません。だからこそ、働く人たちが少しでも安心して働ける環境をつくりたいですし、若い世代が現場業界に興味を持つきっかけづくりにも取り組んでいきたいです。SNSでの発信を通して、溶接や現場仕事の魅力を伝えながら、誰かの挑戦を後押しできる存在になれたら嬉しいですね。

* * *

男性ばかりの現場で、紅一点として働くMIOさんが、これほど多くのものを背負ってきたとは、誰が想像できるだろうか。

不遇な境遇をものともせず、「親を雇う」という器の大きさと行動力で、家族の運命ごとひっくり返してみせた。母として、経営者として、現場女子として。今日もその華やかなメイクと決意をマスクで隠して、現場で働き続ける。

<取材・文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother
配信元: 日刊SPA!

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