◆歌手と俳優の二刀流で磨かれた表現力
一方で綾瀬はるか(41)との共演作で、エリート公務員役だったNHK『ひとりでしにたい』(2025年)や、高級官僚という設定の『おコメの女』などではクールな雰囲気を前面に出す。ハンサムをほとんど意識させず、タイプが全く異なる役柄を難なく演じ分ける。TBS出身のドラマプロデューサー・市川哲夫氏によると、歌手と俳優の二刀流は上手くいくケースが多いそうだ。歌うことも演じることも表現するという点で同じだからである。なるほど、福山雅治(57)、星野源(45)、篠原涼子(52)ら二刀流の成功者は数多い。佐野のドラマ界での活躍も不思議なことではないようだ。
佐野の素顔はというと、音楽、ドラマを問わず、黙々と仕事に取り組む青年だと聞く。にわかで売れたのではなく、下積みが長かったせいでもあるだろう。陸上自衛隊員に扮したフジテレビ『テッパチ!』(2022年)では肉体派に見せるため、自主的に体重を10キロ以上増やしていたことが後に分かった。下積みが長かったから、ハンサムであるだけで売れるほど甘い世界でないことを肌で知っている。文化系の役柄も体育会系の人物もこなすが、私生活でも書道6段で空手愛好家だ。
◆“地方出身グループ”の親しみやすさ
M!LKの中では最年長。リーダーは吉田仁人(26)だが、グループの牽引車的存在である。M!LKがどうして急に大ブレイクしたのかというと、誰にとっても身近な存在となったYouTubeやTikTokなど動画の果たした役割が大きかった。もともと歌唱力とキャッチーなメロディの作品群には定評があったが、動画の普及によって、見る側に音楽だけでなく独特のダンスが併せて届けられるようになった。このダンスが見て楽しく、ハマりやすいと評判になる。奇想天外なこともある衣装も見せられるようになった。
動画がどれくらい見られたかというと、2025年2月に配信された『イイじゃん』の動画総再生数は約25億回。途方もない数字だ。同10月に配信された『好きすぎて滅!』は48億回を超えた。いわゆる大バズりしたのである。これが評価され、同年大晦日の『NHK紅白歌合戦』に初出場。動画と縁がない中高年層らにも認知され、支持層が拡大したという構図だった。
佐野、吉田以外のメンバーは塩﨑太智(25)、山中柔太朗(24)、曽野舜太(24)。それぞれのキャラクターは、「『ドラゴンボール』信奉者」(佐野)、「趣味は将棋、盆栽、読書」(吉田)、「体操、アクロバットが特技」(塩﨑)、「元サッカー少年」(山中・曽野)、「英検準1級、漢検2級で学習院大卒」(曽野)と、さまざまだが、おちゃらけ感とキラキラアイドル感を持つところは一致している。
親しみやすさもよく指摘されるが、それは全員が地方出身であるところも影響しているのではないか。佐野は愛知県岡崎市、吉田は鹿児島県鹿児島市、塩﨑は和歌山県和歌山市、山中は栃木県足利市、曽野は三重県伊勢市が故郷。
東京在住のほうがオーディションが受けやすく、スカウトの機会も多いから、1人として東京人がいないのは珍しい。東京人は洗練されているが、地方人には隣人のような雰囲気を持つ。なにしろ東京在住者のうち、地方出身者の割合は約89%に上るのだから。
M!LKには東京の大学のサークルで一緒になった地方出身学生の雰囲気がある。他愛ないことで大騒ぎしたり、時に真剣に共同作業にあたったり。傍から見ていても楽しそうだ。それも人気の理由なのではないか。
<文/高堀冬彦>
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【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

