◆身体中の穴という穴からオイルを入れられて
さっそく施術が始まる。アーユルヴェーダでは、加齢による乾燥が老化を早めると考えられており、オイルで体内を潤すことがデトックスにおいて重要視されている。「体のいろんなところからオイルを入れるのは知っていたけど、そんなところからも入れるの?っていう連続でした。肌の上からオイルを塗るのはもちろん、鼻や目から入れたり、油を一気飲みするという施術もあって。あらゆる穴からオイルを入れました。アーユルヴェーダ流のアンチエイジングの考え方なんですけど、まさかお尻からも入れるとは思わなくて」

「肛門から腸へオイルを注入するんです。一定時間、お尻の穴をキュッと締めてホールドしてオイルが漏れないように耐えてから、便を出します。注入する量によって『スモール』と『ビッグ』があって、ビッグの場合はオイルが逆流してくる感じで、お腹がガスで溜まってる時のような腹痛が起こります。これがすごくキツい。1回で終わりかと思ったら、『全部で8日間やるからね』と言われて、ええっ……って(笑)」
苦しい施術に耐えた後の排便は非常にスッキリするのだとか。これまで便秘気味だった体質も、バスティを続けていくにつれて改善されていったという。しかし、過酷な施術はそれだけではなかった。
「もうひとつ大変だったのが『ネトラ・タルパナ』といって、目にバターを入れる施術です。厳密にはバターからタンパク質や水分を取った、純粋な脂肪分だけを集めた『ギー』というものを使いました。目の周りに土手を作って、目に良いとされるハーブが一緒に入ったギーを流し込んで、目をゆっくり閉じたり開けたりするんです」

「やってる最中はめちゃくちゃ目に染みて痛いです。だからついつい目を閉じちゃう。終わった後はアイマスクをして1時間休むんですが、そこでオイルが眼球に浸透していく感覚があります。終わった後は目が濡れてるような状態でした。プールやお風呂で目を開けちゃったりしたら、その後ちょっと視界が見えにくくなって変な感じになるじゃないですか。そんな感覚がしばらく続きます。でも、夜寝て翌朝目を覚ますと、驚くほど目が開きやすくなって、視界がクリアでピントが合いやすくなるんですよね。あれは本当今すぐにでもまたやりたい施術です」

「日本の病院だと、専門の部分を見てくれるじゃないですか。お腹が痛かったら内科、耳が痛かったら耳鼻科とか。でもインドでは、もっと全体的に見てくれるイメージです。たとえば脈診でその日の感情を言い当てられることもありました。
モヤモヤすることがある日だと、『今日いつもと違うけどなんか考え事ある?』と聞かれたり。逆に、気分が良い日は『今エキサイティングな感じだよね』みたいな。あとは、顔色を見ただけで『君はチョコレートが好きでしょ』と言い当てられたり、脈や顔色で全部わかっちゃうんです。自分が気づかないストレスとかにも気づいてくれるというか。心も体も包括的に見てくれるので最初から最後まで安心感がありましたね」
◆退院後の心身の変化とこれからの展望

「睡眠の質が上がった感じがします。自然に早起きができるようになったし、便秘やひどかった生理痛や生理前の不快感が軽減したことも大きな変化です。友達からは『肌が綺麗になった』『目が輝いている』と言われました(笑)。精神的にも穏やかになったように感じていますね。とはいえ、帰国してもう1ヶ月経つので日本の生活に慣れてきていて、だんだん前の状態には戻りつつあるんですけど。自分の身体の状態を察するのが上手になったとは思います」
現在、はましさんはInstagramなどを通じて、発信を続けている。発信をする想いは「必要な人に届いてほしい」から。
「日本の人にアーユルヴェーダをもっと知ってもらいたいです。アーユルヴェーダって聞くと、わたしくらいの若い世代の人からはスピリチュアルなイメージを持たれることも多いと思うんです。でも、実際に学んでいったら体質や生活習慣、食事などを体系的に捉える、とても理論的な予防医学だとわかる。その誤解をもうすこし解いていきたい」
西洋医学と東洋医学を上手く使い分けてほしいと話した。
「緊急性の高い手術が必要になるような場面は西洋医学が圧倒的に強いです。東洋医学は体質改善や予防の面で役立つので、それぞれ必要なシーンで利用して、みんなが健康になっていってほしいです。だから、東洋医学が絶対いいよと言いたいわけではないんですよね」
インドの地で彼女が得た気づきは、現代を生きる私たちの心と身体にも、大切なヒントを与えてくれているような気がした。
<取材・文/桃沢もちこ>
【桃沢もちこ】
'93年生まれのフリーライター。社会問題からトレンド、体験取材まで幅広く書きます。アイドルオタクに詳しい。

