老後は安泰だと思ったのに…〈1DKの都営団地〉に住む年金月20万円・60代夫婦。ローン完済の〈4LDKの一軒家〉を売却した「予期せぬ理由」【CFPが解説】

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【CFPが解説】住宅ローンの支払いは慎重に…「繰り上げ返済」の3つのリスク

退職金などのまとまった資金が入ると「住宅ローンを早く完済したい」と考え、繰り上げ返済を選択する方は少なくありません。

繰り上げ返済には、利息負担を軽減できるほか、期間短縮型を選択すれば、住宅ローンを予定より早く完済できるメリットがあります。老後の住居費を減らせることから、安心感を得られる方も多いでしょう。

一方で、繰り上げ返済には次のようなリスクもあります。

・手元資金が不足する可能性
・住宅ローン控除の効果が薄れる可能性
・団体信用生命保険(団信)の保障を十分に活用できなくなる可能性

特に注意したいのが、手元資金の不足です。一度にまとまった資金を繰り上げ返済に充ててしまうと、想定外の出費に対応しにくくなります。今回のマサミチさんのように、築30年を超えた戸建てでは、設備の交換や屋根・外壁などの修繕費が発生するケースも珍しくありません。

実際に、アットホームが公表した調査によると、一戸建ての修繕にかかった費用の平均は615.1万円で、修繕時の築年数は平均38年となっています。

出典:アットホーム 2023年『一戸建て修繕』の実態調査 出典:アットホーム 2023年『一戸建て修繕』の実態調査

また、老後は住宅の維持費だけでなく、医療費や介護費用など、現役時代にはあまり意識しなかった支出が増える可能性があります。

そのため、繰り上げ返済を検討する際は、住宅ローンの完済だけを優先するのではなく、老後の生活費や急な出費に備えられるよう、ある程度まとまった資金を手元に残しておくことが大切です。

4LDKの一軒家を手放し「1DKの都営団地」へ引っ越し…老後のライフプランにおける手元資金の重要性

その後、マサミチさんは今後も続く住宅の維持費や修繕費を考え、自宅を売却する決断をしました。

仮に繰り上げ返済を行わなかった場合、マサミチさん家の毎月のキャッシュフローは以下のようになります。

年金収入:20万円

住宅ローン返済:14万円

その他生活費:18万円

毎月の収支:-12万円

このように、毎月14万円の住宅ローン返済が続くため、年金収入だけでは生活費を賄えず、毎月約12万円の赤字となる可能性があります。その場合、貯蓄を生活費として取り崩す生活になります。

もっとも、75歳で住宅ローンを完済すれば返済負担はなくなります。毎月約12万円の赤字と100万円の修繕費を見込んでも、単純計算では75歳時点で約360万円の資産が残る計算です。

その間に生活費の見直しや働き方の変更、資産の有効活用などの対策を講じる時間的な余裕も生まれるため、今回のように資金不足を理由として早期に自宅を売却する必要性は低かった可能性があります。

現在、マサミチさんは夫婦で1DKの都営団地に暮らしています。

自宅を売却したことでまとまった資金を確保でき、現在の生活は以前より安定しています。しかし、マサミチさんは「あんなに苦労して住宅ローンを返した家を手放すことになるなんて思わなかった」と複雑な心境を口にします。

住宅ローンの繰り上げ返済は、利息負担を軽減できる有効な選択肢です。一方で、退職金などのまとまった資金をすべて返済に充ててしまうと、修繕費や医療費など老後の予想外の支出に対応できなくなるおそれがあります。

老後の安心につながるのは「住宅ローンを完済すること」だけではありません。急な出費にも対応できる十分な手元資金を確保しながら、自分に合った老後のライフプランを立てましょう。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP

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