投資家保護に配慮した“優遇構造”…「個人向け国債」のポートフォリオにおける役割【プロの視点】

投資家保護に配慮した“優遇構造”…「個人向け国債」のポートフォリオにおける役割【プロの視点】

30〜50代の購入が約7割…直近のトレンドは「固定5年」

楽天証券の購入データ(2022年度、2022年4月~2023年3月)によれば、購入者の約75%を30~50代が占める。また、平均買付金額は約190万円である一方、5万円以下の購入者が半数を超えており、少額から利用する投資家も多い。オンライン証券の普及も相まって、個人向け国債は幅広い投資家層に浸透しつつあることがうかがえる。

商品別では、2023年度は変動10年が74.7%と圧倒的だったが、2025年度には固定5年が49.1%と逆転し、直近(2026年4~6月)には54.4%と過半数に達した。

固定5年が最も売れている理由は複合的だ。足元の利回りが1.86%と最も高いこと、10年という長い満期への心理的抵抗感から5年のほうが選ばれやすいこと、そして「半年ごとに利率が変わる」変動10年の仕組みの複雑さに比べ、固定5年の「1.86%が5年間固定」というシンプルさが意思決定を容易にしていることが挙げられる。

ただし今後、10年金利が5年金利を大幅に上回る局面では、変動10年が有利になることもあり得る。どちらが最適かは金利の水準と形状、自身の資金計画次第だ。

投資家保護に配慮した"優遇構造"…「変動10年」が選ばれ続ける本当の理由

変動10年の利率は、直前の10年固定利付国債入札の平均落札利回りを基準金利とし、それに0.66を乗じた値が半年ごとに見直される。長期金利連動の設計であるため日銀の政策変更が波及するにつれ適用利率も切り上がる。

令和8年6月募集分の適用利率1.74%は、同じく国が発行する6ヵ月物国庫短期証券(約1.0%)を大幅に上回っており、元本保証を加味すれば経済合理性があるといえるだろう。

中途換金の仕組みも重要だ。変動10年・固定5年・固定3年のいずれも発行後1年経過すれば額面で換金でき、差し引かれるのは直前2回分の各利子(税引後)相当額のみだ。

変動10年は半年ごとの利率見直しにより金利変動による価格下落リスクが大幅に低減されており、中途換金では額面買取のため価格変動リスクは実質的に顕在化しない。固定型においてこそこの仕組みはより本質的な価値を持つ。

購入後に金利が上昇しても元本が額面で戻るという保護は、通常の債券市場にはない特殊な設計だ。財務省が個人投資家のために意図的に設計した、投資家保護に配慮した制度といえる。

あなたにおすすめ