購入手数料はゼロ…金融機関が「個人向け国債」を販売する戦略的な意義
購入時手数料はゼロだが、財務省の開示資料によれば取扱手数料は額面100円あたり変動10年14銭(0.14%)、固定5年11銭(0.11%)、固定3年8銭(0.08%)、さらに保有残高の0.02%(年率)が管理手数料として支払われる。
手数料率は低いが、対面・オンラインを問わず安全志向の顧客との接点を作るドアオープナーとして、また日銀が国債購入を減らすなかで個人投資家を新たな国債の買い手へつなぐ橋渡し役として、金融機関にとり一定の戦略的意義があるのではないだろうか。
個人向け国債は「安全に置く」ための商品
個人向け国債は、「増やすための商品ではなく、安全に置くための商品」だと考える。商品選択よりも先に考えるべきは、自分の資金の時間軸だ。
機関投資家のように売買を前提とするのでなければ満期保有が基本であり、それによって初めてペナルティなく最大限の利子を受け取ることができる。中途換金制度はあくまで万が一の安全網として位置づけるのが適切だろう。
なお、財務省は2027年1月発行分から商品名を「個人向け国債プラス」に変更し、マンション管理組合・学校法人・医療法人等にも販売対象を拡大する予定だ。修繕積立金という「絶対に減らせないお金」を抱えるマンション管理組合との相性は本質的によく、潜在需要は数兆円規模に及ぶ可能性がある。
個人向け国債は決して派手な商品ではないが、堅実に利回りが得られる商品といえるだろう。インフレ率が利率を上回る局面では実質的な購買力が目減りする可能性もある。それでも、ゼロ金利時代には省みられなかったこの商品が、金利正常化の流れのなかで再び脚光を浴びている。
2,394兆円に膨らんだ個人金融資産のうち、家計が保有する国債全体でもわずか約18兆円にとどまる。NISA等も活用した積立・長期・分散が投資の王道であるのはいうまでもない。
国債については、金利予想を当てることよりも、自分の資金の時間軸を理解すること。そのうえで、安全資産の一部として日本国債を位置づけることは、検討に値するのではないだろうか。
久保 智
マレックス証券株式会社
代表取締役社長
