◆「対等の視点」を得ることができた

鈴木:イギリス発祥の資格で、家庭保育のスペシャリストという感じですね。イギリスでは国家資格になっています。コロナ禍で授業がオンラインだったので、育児しながらでも通学せずに勉強ができました。
――どんなことを学ぶんですか?
鈴木:育児や教育をすると、どうしても親子は上下関係になってしまいがちなんですが、子どもにもちゃんと人格があって、教えるという構造があってもどう対等に接するかという視点は、いい学びになりましたね。
――時間的に追われていたり、繰り返し言うことを聞いてくれなかったりすると、どうしてもトップダウンな言い方になってしまいますが。
鈴木:そうですよね。でも、子どもが成長する中でどんな時期にどんな感情が芽生えるか、その感情が行動としてどう現れることが多いかも教わります。そのおかげで、「あ、今はこんな気持ちになっているからなんだ」と、子どもの感情ごと受け入れながら接することができるようになりました。まあ、心に余裕がある時だけなんですけどね(笑)。
◆悲しい経験を乗り越えて…
――先日3人目が生まれて、思いを新たにしたことはありますか?鈴木:妊娠出産の奇跡も感じましたし、子どもが元気で目の前にいてくれることは当たり前じゃないんだと、改めて実感する毎日です。
――日常だと忘れがちですが、命は儚い一面もあります。その思いは、昨年の辛いご経験からきている部分もありますか?
鈴木:そうですね。3人目が生まれる1年くらい前に、稽留(けいりゅう)流産を経験しました。年齢的にも、流産する可能性が低くないことは頭ではわかっていましたが、「まさか自分が」という気持ちでしたね。
――簡単には受け入れられないですよね。
鈴木:検診で「赤ちゃんの心拍が動いていません」って伝えられたんですけど、家に帰ったらリモートで働いている夫がいて「どうだった?」と聞かれました。もちろん、当たり前に元気に育ってた報告が来るだろうというスタンスで。夫の問いかけを聞いた瞬間、声をだして泣きましたね。私、感情を出して泣くタイプじゃないんですが、その時はもうダメでした。7年前に父が亡くなったんですが、声を出して泣いたのは人生でその2回だけですね。
――言葉にならないショックですよね。
鈴木:でも、授かった赤ちゃんが少しの間でも私のところに来てくれたことで、色々と考えることができました。子どもたちは毎日うるさいですけど、「うるさくてありがとう」くらい思えるようになりましたね。
どんな事も意味があって起きていると思うので、あの赤ちゃんに会えなかったのは残念ですけど、今の子育てのハッピーにも繋げてくれている感じがします。
=====
「元気で明るい鈴木あきえ」はあくまで表の顔。育児に苦しんだ時期も、言葉にできない喪失もあった。それでも、悩みながら自分なりの答えを探し続けてきたからこそ、今の柔らかな強さがあるのだろう。「完璧じゃなくていい」という彼女の言葉は、同じように日々に追われる私たちの心を少し軽くしてくれる。

<取材・文/ Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

