「次はどんなやり方ならうまくいきそう?」…指導の最後は「問い」で締める
ステップ1:「承認」から始める
最初に、相手の行動や努力のなかで「良かった点」を伝えます。
例:「自分からミスを報告してくれて助かったよ。ありがとう。いい経験をしたね」ステップ2:行動を「事実」として伝える
感情的・抽象的な表現ではなく、観察した「事実」に焦点を当てます。具体的な行動(事実)を指摘すると、相手は「人格を否定された」と感じにくくなります。行動(事実)に対して、相手は納得するでしょう。
悪い例:「なんで、そんなやり方をしたんだ」
良い例:「〇〇の方法でやっていて、こういうことが起きたんだね」
ステップ3:相手の行動に「共感」を示す
事実を指摘した後に、相手の立場や感情を理解する言葉を添えることが不可欠です。この共感を示す一言が、相手の受け止め方を前向きなものに変えます。
悪い例:「なんで、もっと早めに相談しなかったんだ」
良い例:「たしかに急な対応で大変だったね」「迷いながら進めてくれたのは伝わっているよ」
ステップ4:「一緒に考える問い」で締める
最後は、押し付けではなく、共に考えて終えてください。アメリカ・コーン・フェリー社の調査結果によると、質問を中心にした面談を行うリーダーのチームは、メンバーの自律的改善率が高いと報告されています。
悪い例:「次回からは、〇〇のやり方に改善してくれ」
良い例:「次はどんなやり方ならうまくいきそう?」「どんなサポートがあれば改善しやすい?」
このステップを踏むことで、「厳しい上司」から「個を尊重する上司」へ変化できます。慣れるまでは意識する必要があるかもしれません。
言葉を選んで伝えるプロセスを、回りくどいと感じることもあるでしょう。しかし、これは単なる話し方のテクニックではなく、部下との信頼関係を再構築するための「技術」です。意識的に繰り返すことで、この4ステップは自然な振る舞いへと定着していきます。
一度これが組織の文化となれば、上司が細かく指示を出さずとも、部下が自発的にミスを報告し、自ら改善策を考える「自律型組織」への転換が加速するはずです。この改善指導方法を取り入れることで、どのようにチームが変わるか、具体的なエピソードと共にご紹介しましょう。
厳しい指導から一転、「共感」重視でチームの空気が一変
〈事例〉
あるメーカーの中間管理職のCさんは、これまで「厳しく指導するのが上司の役割」と考えていました。ところが、メンバーに指摘を繰り返すうちに関係が悪化。会話は最低限、ミスも減らず、チームの雰囲気は冷え切っていました。そこでCさんは、先述した4ステップを実践することにしました。
「お疲れさま。ここの分析、細かくやってくれて助かった」と承認。「ただ、報告の締め切りが少し遅れたね」と事実を指摘。「忙しいなかでの対応で大変だったね。頑張ってくれていたのは伝わっているよ」と共感。「忙しかったと思うけど、どうすれば次は間に合うと思う?」という質問で締めました。
その後、このメンバーは、自ら「次はこう進めます」と改善策を提案してきてくれました。チーム内でも報告や相談が増え、Cさんはこう語っています。
「言い方を変えるだけで、チームの空気が全く違った」「叱るより、共に考えるほうが結果的に責任感を育てられる」
このCさんの変化は、改善指導の質がリーダーへの信頼を決めることをまさに証明しています。上司が「あなたの成長を信じている」という姿勢を見せることで、部下は初めて「上司が成長を支援している」と受け止めることができます。
多くの中間管理職は、「言いにくいことを伝えるのは、関係を壊すリスクだ」と考えがちですが、現実は逆です。部下にとって真の不安とは、適切なフィードバックがないまま放置されることです。
自分の改善点が見えず、成長の機会を奪われることは、部下に「自分は期待されていない」という思いを抱かせ、それは結果として組織への不信感へとつながります。上司が「あなたの成長を信じている」という姿勢を、この4ステップで形にして見せることで、部下は上司の指摘を「支援」として受け止めることができます。
改善を伝えることは、相手を否定することではありません。むしろ、「あなたに期待している」という、あなたから部下への最大の期待のメッセージです。まず相手の「良い点」を具体的にほめて承認する。そして、「事実」を伝える。相手の行動を受け止めて「共感」を示す。「一緒に考える問い」で締めくくる。
4つのステップを実践することで、あなたの改善指導方法は単なる「注意」の枠を超え、パワハラにならない「成長支援」に変わります。それは、心理的安全性を守りながらも、質や成果に対しては妥協をしない、真のリーダーの姿です。
竹下 友浩
マネジメント研修講師/生成AI研修講師&コンサルタント
