◆「養子は15歳以上に限る」の根拠は「民法」
前号で指摘した第二案の「養子は15歳以上に限る」は、自民党の部会でも大問題になった。政府が「民法でそうなっている」などと間違った説明をしたので、「どこにそんなことが書いてある?」と部会の開会前から批判噴出だった。そこで官僚が出てきて、「政府の報告書でそうなっていた」などと事実誤認(もしくは意図的な噓)の説明を行った。異論噴出だったが、自民党執行部は議論を封殺して押し切った。陣笠(じんがさ)議員に法解釈の誤りを指摘されるような官僚に頼り切っていた、麻生太郎元首相と取り巻きの議員の責任は重い。
第一案の「残るのが原則で離脱が例外」もそうだが、第一案が原則で第二案が例外というのも、原則と例外の倒錯だ。
前号で、自民党一人の責任だと指摘したが、正確には、麻生元首相ら自民党の一部の責任者だけの責任である。連立与党の日本維新の会に根回しをしていないのだから、もちろん野党にも根回ししていない。
野党からは「どこからツッコミを入れて良いかわからない」と呆れられたが、「しかし、こんなデタラメな典範改正案でも通さない訳にはいかない。とにかく我慢だ」との声もあった。
去年の年末は自民党代議士と「高市さんは運がいい。内閣の命運を賭けなくても、歴史に残る偉業を達成できるのだから」と笑いあっていたが、この出来栄えでは……。
◆「麻生家は令和の藤原家」
そして、国会の停滞。維新と連立を結ぶ際に、協定書を結んだ。その中で最も重要な二つと位置付けられているのが、副首都法案と定数削減法案だ。副首都法案はともかく、定数削減は議員の政治生命や政党の盛衰に係わる。簡単ではないが、高市自民党はいとも簡単に与党だけで審議入り。これに全野党が反発。日本保守党と日本共産党までが同一歩調をとる始末だ。それほど高市自民党の手順は強引だった。
そして「皇室典範だけでも審議を」と呼びかけても、本来ならば国会審議に堪えられないどころか、自民党の部会を通らないレベルだ。仕方が無いから、審議無しで通す方向性で調整している。
政府与党の、陣笠議員に法解釈の誤りを指摘される官僚と、その程度の官僚に頼り切っている政治家の、ここまでの無能とデタラメが許される理由は何か。マスコミを味方につけた野党第一党、特に野田佳彦よりはマシの一点だけだ。
その野田元首相、「麻生太郎は令和の藤原道長になろうとしている」などと言い出した。「知っている名前をあげているだけだろう。どこが道長だ」と呆れていたが、野田氏、本気のようで、選挙区でビラまで配って歩いている。野田氏、藤原道長が何なのか、わかっているのか。

それにしても、絶対多数を有する自民党の機能不全。無能な官僚に頼り切る無能な政治家の支配。どこから手をつければ良いのやら。
次の選挙が思いやられる。
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】
皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売

