別居後に待ち受けているもの
ミツコさんにとって長女が家を出たタイミングは、長年温めてきた離婚へと動き出すタイミングだったようです。母親としての義務を果たしたという大きな区切りがついたのかもしれません。
しかし、不貞行為やDVといった、法律上で明確に認められるような離婚事由が双方にない場合、突然の離婚請求は相手に拒絶され、話し合いが決裂してしまうケースが少なくありません。ミツコさんは、トオルさんに正面から切り出しても納得してもらえないことを見越し、まずは「別居」という客観的な事実を作ることで、関係の清算に向けた段階を踏もうとしたと考えられます。
そして、この「別居」というミツコさんの決断は、トオルさんに対して精神的なショックだけでなく、今後避けては通れない現実的な「お金の問題」をも突きつけることになります。
一般的な実務の考え方では、たとえ別居中であっても夫婦である以上、収入の多い側がもう一方の生活費を支える「婚姻費用」の分担義務が生じる傾向にあります。月収78万円という稼ぎがあるトオルさんの場合、別居中のミツコさんの生活費として、毎月決して小さくない金額を支払い続けなければならない可能性が出てくるのです。
さらに、このまま将来的に離婚というステップへ進むことになれば、婚姻期間中に築き上げてきた預貯金や有価証券、マイホームなどの資産を、原則としてふたりで分け合う「財産分与」という経済的清算も予想されます。
浮気もギャンブルもせず、高い給与を家庭に入れ、自分なりに家族を思いやってきた。翌日の銀婚式のために小さな花束まで用意していた夫の優しさは、配偶者との目に見えない「心の対話」を怠り続けた結果、精神的にも経済的にも大きすぎる代償を伴う「別居」という形で新たな生活がスタートしました。
