そう言い切るのは、ホスト歴30年の美島光司さん(52歳)。かつて歌舞伎町の名門ホストクラブ「愛本店」でNo.1に上り詰め、細木数子さんからも指名を受けた伝説のホストだ。

◆資本主義の格差を見てホストの道へ

「僕は兵庫の西宮にある関西学院大学に通ってました。元々国立大学を目指してたんですが、学校の勉強をまともにしたことがなくて。ただ、英語と日本史は好きやったんで、その2教科と国語の3教科で受験できる関学に行きました」
関西学院大学は、「関関同立」の一角を担う関西屈指の名門私立大学。同時にお金持ちの子どもが集まる“お坊ちゃん大学”としても知られている。
「1回生で入ったゼミの男連中は全員、附属校からの内部進学の超金持ちでした。みんな当たり前のように芦屋の六麓荘(ろくろくそう、関西屈指の超高級住宅街)に住んで、まだ二十歳そこそこの学生のくせに、ポルシェに乗って通学してくるんです」
しかし、美島さんは一般家庭の出身。関学入学後は、ことあるごとに「格差」を見せつけられた。
「あるとき、ゼミの連中がみんな同じブランドのバッグを持ってて。田舎者の僕は何も知らんから、『それいくらするん?』って無邪気に聞いたんです。そしたら『ルイ・ヴィトンのやつで、15万円だよ』って返ってきたんですわ。僕なんて、ディスカウントストアで買った3,000円のバッグやのに……(笑)」
普通の大学生の美島さんにとって、バッグ一つに15万円を使う世界があるなど、想像もできなかった。
そして、美島さんはそのゼミで、格差をより痛感する出来事を目の当たりにした。

授業は決して難しい内容ではなかったが、内部進学の生徒は本当に何も理解していない。だが彼らは「親が金持ちだから」という理由だけで、関西学院大学という優秀な大学に、努力もせずに入っている。
「なんでこんなアホで、ただ金持ってるだけの連中と一緒におらなあかんねん」
そんな環境に嫌悪感を抱くようになった美島さんは、ある決断をした。
「京都大学に入り直すために仮面浪人するか、同級生よりも死ぬほど金を儲けるか。どっちかの道に進もうと思ったんです」
最終的に美島さんは後者を選んでホストになったわけだが、そのきっかけは些細なことだった。
「テレビの深夜番組で、大金稼ぐホストたちが映ってたんです。それ見てたら、頭から『京大』の文字がどんどん消えていって。『ホストになって、あいつらより金稼いで見返してやりたい!』っていう衝動が抑えられんくなったんですよね(笑)」
こうして、美島さんは大阪・ミナミの夜の街に飛び込んだ。
◆大金を稼いで札束で逆襲する日々

また、来店する金持ち客も、ヤクザの妻や芸能人、高級クラブのママなど、一癖も二癖もある人種ばかり。下手なことをすれば、売上どころか命がなくなってもおかしくない環境だったという。
美島さんは接客業の経験はなかったが、持ち前の喋りと明るい性格ですぐに人気を掴み、あっという間に人気ホストとなった。
「始めたときは日給3000円スタートやったんですが、すぐに月数百万ぐらいは稼げるようになりましたね」
そして、美島さんはお客さんとして来ていた福原(神戸にある歓楽街)の経営者に見初められ、21歳の若さで福原にホストクラブを出店するまでになった。
「大金を稼ぐ」という目標を達成した美島さんは、その喜びを深く噛みしめていた。

かつて格差を見せつけられた同級生に、それ以上の「強烈な格差」を見せつけたかった。
だが、その後美島さんは、もっと残酷な現実を目の当たりにすることになる。

