◆輝かしい実績の裏で「三足のわらじ」を履く理由

全日本選手権やアジアカップでの優勝経験のほか、2025年に史上初の開催となった「FIFAフットサル女子ワールドカップ フィリピン2025」では日本代表に選出されるなど、一気に才能を開花させたのだ。
その一方で、現在はフットサル選手に加え、フリーランスでスポーツアパレルブランド「punto(プント)」の企画・運営、企業の採用広報という「三足のわらじ」を履いているという。
なぜ、日本代表に選ばれるだけの実力があるのにもかかわらず、マルチに活動しているのだろうか。
松本さんは、「フットサル選手として競技を続けながら、SNSでの発信を地道に積み重ねてきたことが、活動の幅を広げるきっかけになった」とし、次のように理由を語る。

そこから競技活動だけに枠をはめず、フットサル以外の分野にも挑戦したいと考えるようになり、活動の幅を広げていきました」
◆好きなことを続けられるのは当たり前ではない
アパレルブランドの立ち上げの背景には、「スポーツアップサイクル」への深い関心があるという。スポーツの現場では、役目を終えたユニフォームや使われなくなった資材など、多くの廃材が発生することが社会課題となっている。その現状を知るなかで、松本さんは「本当だったら廃棄されるものに、新たな価値を吹き込む取り組みに強く惹かれた」と話す。
採用広報の仕事では、アスリート採用に力を入れている企業でキャリア支援を担っている。「競技を続けたい一方で将来のキャリアが不安」「競技と仕事をどう両立すればいいかわからない」といった葛藤を抱えるアスリートに対し、多様な働き方やキャリアの選択肢を伝えながら、一人ひとりと向き合っているという。
こうしたなか、フットサル選手というのは、「プロになっても食べていくのが難しい」といわれている。
“好きなことを仕事にしたい”という思いがあるのに対して、現実的には収入面の課題もあるなど、そこには理想と現実のギャップがあるわけだ。
この点について、松本さんはどのように考えているのだろうか。
「好きなことを仕事にするのは簡単ではありませんし、好きなことを続けられること自体が当たり前ではないと思っています。だからこそ、今こうして競技に打ち込める環境への感謝は絶対に忘れたくないですし、その想いを原動力にフットサルに取り組んでいます。
もちろん、競技をやっている以上はプロとしてフットサルだけで食べていけるのが理想です。ただ、現実がそうではない状況のなかでも、『三足のわらじ』を履くことで得られる成長やメリットもたくさんあると実感しています」

さらに競技生活を続けながらも、並行して引退後のキャリアを視野に入れた準備も進めていくそうだ。
好きなことを仕事にし、それを継続することは決して容易ではない。
そうした現実を受け止め、挑戦を続ける姿に、彼女ならではのブレない“生き方”が映し出されているのではないだろうか。
<取材・文/古田島大介>
【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

